2022年9月17日(土)、大学院経営学研究科経営学専攻リーダーシップ開発コース(LDC)の説明会をオンラインにて開催いたしました。多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。
説明会前半の「教員パート」では、経営学研究科の教員がコースの特色や入試制度について説明を行い、続く「在学生・修了生パート」では、1年次、2年次及び修了生の10名が、LDCの学びについて、受験勉強から在学中の生活、授業内容、修了後の活動まで詳しく紹介。終了後は参加者からの質問に直接答えるQ&Aの時間が設けられました。
本レポートでは、当日ご参加いただけなかった方にも、当コースの理解を深めていただけるよう、説明会レポートを「教員パート」「在学生・修了生パート」「Q&Aパート」の3回に渡ってお届けいたします。
※教員パートはこちら、Q&Aパートはこちら
<在学生・修了生パート「在学生&修了生から見たLDC」の流れ>
◇入学前
●受験を決意したタイミング、受験理由、受験勉強
◇在学中
●年間、週間のスケジュール
●1年次の半期の振り返り、学びから実践へ
●プロジェクト(クライアントワーク)について
◇修了後
●個人としてのキャリア
●LDC修了生としての活動
◇Q&A
※提出書類や試験内容についてのコメントは過年度実績に基づくものですので、23年度入試の詳細は10月末公開の入試要項を必ず確認してください
◇在学生・修了生パートオープニング
在学生・修了生パート「在学生&修了生から見たLDC」を担当したのは、LDCで学ぶ1年次4名、2年次3名、修了生3名計10名のスピーカーたち。プレゼン資料の準備も司会進行も全て在学生、修了生が行いました。
まずは本日のスピーカーの紹介です。
「LDCでは、グループワークも多く、チーム内ではフラットに話し合える環境づくりのため、お互いをニックネームで呼び合う文化がある」とのことで、スピーカー全員がニックネームで紹介され、手を振ってにこやかに挨拶。なんともリラックスした和やかな雰囲気が伝わってきます。プレゼンは、在学生、修了生へのアンケート結果とスピーカーによるリアルな声を紹介することで、入学から修了まで、LDCの学びの全体像がつかめるような構成となっています。
◇入学前
【受験を決めたのはいつ?】
在学生は受験をいつ頃決意したのでしょうか。またその動機はどのようなものだったのでしょうか?1年次、2年次の在学生34名を対象に行ったアンケート結果によると、半年から2カ月前に決意した、という人が半数を占めており、昨年の説明会で受験を決めた人も多かったようです。また、前年の受験で不合格だったため、リベンジしたという人もいました。
【受験を決めた理由は?】
受験を決めた理由は、「人材開発・組織開発について体系的に学ぶことができ、専門性が身につく。理論と実践が融合した学びの場であり、学びをキャリアに活かすことができる。日本全国どこからでも受講することができ、オンラインで修了できる」といったところにあるようです。スピーカーである1年次の在学生は「これまでHR畑で人や組織を見てきたが、経営、事業といったところまでの視点が持てていないところに課題感を感じていたため、体系的な学べる場を探していた。とはいえ、研究者になりたいわけではなかったので、理論と実践を結びつける、というところにも惹かれた」と話していました。
【受験勉強を始めたのはいつ?】
では、実際に受験勉強を始めたのはいつ頃だったのか?というと、半年~2カ月前が35.3%、2カ月前~直前が26.5%となっていて、在学生の約6割が「入試の半年前から直前まで」の間に受験勉強を始めていたことが分かりました。「ただ、早いにこしたことはないかと思いますので、この説明会で受験を決めた方は、ぜひ今日から勉強を始めてください」というのが在学生からのアドバイスでした。
どのように受験勉強したのかについては、多くの人の回答を総合したところ、「推薦書籍や関連書籍を読み、人材・組織開発の理論・用語を調べる」といった「インプット」と「要点をノートやメモに書き出してまとめる、過去問を解く、学んだ内容をSNSで発信する、週に1冊推薦書籍を読む勉強会を開催する」などの「アウトプット」を組み合わせた学習法が効果的、とのことでした。
【プロジェクト計画書はどのように書いた?】
LDCに出願するにあたって必要となるのが、入学後、実際にクライアント組織に介入し課題解決を行うプロジェクトについて記載する「プロジェクト計画書」です。スピーカーのお一人は、「クライアントが見つからず、プロジェクト計画書が一番悩みました。そこで、前職の職場をクライアントとしてヒアリングをさせてもらって課題を抽出し、なんとか計画書にまとめました。ただ、入学してから、LDCで実際に行うプロジェクトは、計画やクライアントを変えてもいい、ということが分かったので、悩んでいる方は、現時点で考えているようなものを計画書として書けばいいのではないかと思います。重要なのはなぜLDCで学びたいのか、自分の中での動機を整理し、想いをしっかりと伝えることです」と話していました。
◇在学中
【年間スケジュール】
LDCに入学後はどのような日々が待っているのでしょうか。下記は今年度の年間スケジュールを授業形態別に色分けしたものです。このように見ていくと、1年次の方が授業数も多く、特にチーム演習が多いこと、2年次には個人演習が多くなっているということが分かります。2年次の在学生は、「2年次は、修士論文にあたるリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトが中心となり、個人での活動が増えます。孤独にならないよう、在学生同士で支えあって進めています」と話していました。
【1週間の過ごし方・時間のやりくり】
LDC生のほとんどが仕事をしながら学んでいます。仕事や家庭との両立はどのようにしているのでしょうか。下記は1年次の在学生が「この半年間で最も忙しかった」という1週間のタイムテーブルです。金曜、土曜日が授業日なのですが、この週末には、リーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト(LWP)の中間発表が予定されていたため、議論を重ねる必要があり、平日の夜や土曜日の授業前後に時間を取って、チームミーティングを行っていたそうです。
授業が行われるのは金、土曜だけですが、その他の曜日も、自習やレポート作成、資料作成、チームミーティングなどにも時間を割く必要が出てきます。「正直、プライベートの6~7割は大学院になる」とのことですが、果たして、どのようにして時間のやりくりをしているのでしょうか。
在学生に尋ねたところ、
「チーム演習」に関しては、
・忙しい時期は率直に他のメンバーに話し、助けを求める。
・仕事やプライベート(家族)の状況など、差し支えない範囲で自己開示しておく
・メンバーの活動時間やミーティングの進め方など、ルールを合意しておく
「課題」については、
・課題の時間もスケジュールに組み込み、時間を決めてやる
・溜めずにやる
といった回答がありました。
また、
・予め会社に大学院のことを伝え、職場の理解を得るようにし、場合によっては業務量を調整してもらう
・家族と相談し、家庭内の役割分担を見直すなど、理解を得られるようにしておく
といったことも、学びと仕事、家庭とを両立させるうえで押さえておきたいポイントとのことです。
【LDCでの学び:1年次春学期の振り返り①LWP】
LDCでは、どのような授業が行われているのでしょうか。1年次の在学生が「LDCの学びの『核』となる授業」として紹介したのは、1年次最初のグループ演習「リーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト(LWP)」でした。⼈材開発、組織開発に必要な概念を、異種混交チームでの課題解決を通して学ぶ授業です。チーム課題は「2022 年において、多くの企業が抱える⼈材課題を調査し、ひとつ決めよ!」「60 分で受講可能なオンライン・ワークショップを開発し、実施せよ!」というもの。入学式当日にプロジェクトチームが発表され、初対面のメンバーとオンラインでのチーム活動がスタート。4カ月間かけて、オンライン・ワークショップ開発に取り組みます。入学から最終成果報告会まで4カ月間のチーム活動を通して、在学生は改めて自分と向き合い、LDCで学ぶ意味を自身に問いかけ、そのことが、秋学期以降の学びを深めていくことにつながっていきます。
【LDCでの学び:1年次春学期の振り返り②理論から実践へ】
高度な理論に基づき、経営に貢献する実践を行うアカデミック・プラクティショナーを目指すLDCの授業の特長は「理論と実践」を行き来するというところにあります。といっても、ただ授業の中に「理論と実践」が組み込まれているというだけではありません。LDCで半年間学んだ1年次の在学生の多くが、「全ての授業がつながっていると気づいた」と話すように、LDCでは、授業間のつながりによって相互作用が働き、より理解が深められるようになっています。スピーカーである1年次の在学生は、「戦略的人的資源管理で習った7Sモデルを使って、社内の人たちへの説明資料を作成することができた」「経営学概論で学んだ内容が実際に中期経営計画策定する際に役立った」など、「学んだことがすぐに仕事に生かされた」といった感想を話していました。
【LDCでの学び:1年次春学期の振り返り③学びの拡がり】
LDC入学から半年、学びの意欲が高まった結果、1年次の在学生がはじめたのは、自分たちの「学び場づくり」でした。在学生同士で声を掛け合い、「人材版伊藤レポート研究会や読書会を開く」「学外セミナーへ参加する」など、授業外でも学びを追求する活動を行っています。また、「日常的にSNSで、職場でのできごとを共有したり、悩みを相談したり、情報交換したりと、お互いに自身が持っている経験や知識を共有し、共に学びあうことで学びの拡がりを感じている」と話していました。
【LDCでの学び:1年次秋学期~2年次 プロジェクト(クライアントワーク)】
1年次秋学期は、2年次の「リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)」に向けた準備に入ります。LFPとは、個人で外部クライアントに対する人材開発・組織開発のサイクルに基づいたプロジェクトを行うもので、そのプロジェクト実践をまとめたアカデミック・ペーパーを提出することがLDC修了の要件となっています。
このLFPの準備として、置かれているのが1年次の秋学期にある「人材開発・組織開発2」です。この授業では、チームで外部クライアントに対して人材開発・組織開発のサイクルに基づいたプロジェクトを行います。
<人材開発・組織開発のサイクル図>
実際に外部クライアントに対して、人材開発・組織開発のプロジェクトを行うということで、在学生も最初は「外部クライアントを見つけられるのか?」と、不安だったそうですが、「自組織(組織全体でなく部課単位のことも)、知人の組織、知人やLDCの先輩・同級生からの紹介、教育機関などでの教育プログラム開発との連携」などにより、最終的に外部クライアントが見つけられなかった人はいないということです。
1年次秋学期に行われる「人材開発・組織開発2」では、約4カ月間で人材開発・組織開発のプロジェクトをクライアントとの契約から評価までチームで行います。2年次の在学生は「クライアントの認識している課題が解決するべき課題としてはズレている場合もあり、課題の特定に難しさがありました。また、特定した課題についてクライアントと合意し、アクションにつなげるところも苦労しました」と話していました。
<人材開発・組織開発2プロジェクトの流れの例>
【LDCでの学び:2年次リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)】
2年次のリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)では、約10カ月間で人材開発・組織開発のプロジェクトをクライアントとの契約から評価まで個人で行います。LFPについて、この3月にLDCを修了した修了生の一人は「クライアントの課題の特定は最初で最大の難所でした。それに加えて、課題をアカデミックな概念で読み解く作業も必要で、そこに相当な時間を取られました。アカデミック・ペーパーとして提出するために、実践と研究(理論とデータ)の行き来を繰り返しながら、一連のプロジェクトを論理的な文章にまとめていきました。長く厳しい道程でしたが、その経験を通して『理論とデータを駆使できる実務家』への道が拓けたと感じます。まだこれからも学び続けなければなりませんが、まずは第一歩を踏み出せた、と感じています」と話していました。また、LFPはチームではなく、個人での活動ですが、共に学んできた同期の仲間からの助け合いが大きな支えになったということです。
<リーダーシップ・ファイナル・プロジェクトの流れの例>
◇修了後
LDCは今年3月に初めての修了生が誕生しました。修了生にとって、LDCの学びとはどのようなものだったのでしょうか、また、修了後はどのような活動を行っているのでしょうか。
LDC修了生に対するアンケートでは、修了生の4人に1人が「人材・組織・リーダーシップ開発関連業務を任せられるようになった」と答えています。また、CHRO(最高人事責任者)に就いた人、立教大学の講師になった人、立教大学の博士後期課程に進学した人や、転職した人、起業した人など、LDCで学んだことは、それぞれのキャリアに大きな影響を与えていることが分かります。
【キャリア意識に変化があった】
転職や起業など表向きに大きな変化は無かったとしても、キャリア意識に大きな変化があったという人もいます。修了生のIT企業勤務、光延詩乃さんは、在学中に仲間と切磋琢磨し、自分を見つめ直すことで、「自分で人生のオールを握っている感覚を得た」と話します。光延さんは、社会人3年目に人事企画の部署に異動となり、評価報酬制度の刷新プロマネを任されたものの、専門的な知識も経験もないまま重要な任務に就いていることへの罪悪感とプレッシャーから、「きちんと会社に貢献できるような仕事をしたい」とLDCに応募したそうです。2年間LDCで学んだことで、理論や実践スキルを得ただけでなく、「今後の人生を歩んでいくうえでの地図とコンパスを得ることができた。そして、この学び方を続けていけば、きっと会社にも世の中にも貢献することができる」という自信ができたといいます。修了後は「世の中に、もっと社会人大学院の良さを伝えたい」と、「Elephant Career」というメディアを立ち上げ、活動を始めました。多くの社会人大学院生に対するインタビューが数多く掲載されたサイトは、社会人大学院への進学を考えている方の参考になりそうです。
【活動の幅が広がった】
また、LDCで学び、専門性が高まったことで、仕事の幅が広がったという人もいます。修了生の一人、人材開発のコンサルティング会社を経営する堀江敦子さんは、「これまでは自らの経験からの持論に基づき取り組んできたところがありました。もちろんそれは自分にとって最大の強みだということは変わりませんが、LDCで学んだことで、持論だけでなく、理論やデータで説得力をもって語ることができるようになりました」と話します。修了後は、人的資本経営についてのメディア「Human Capital Online」 (日経BP社)に連載を持つことになったといいます。また、修了後もLDCの教員陣や同期のLDC修了生とのつながりが途切れることがなく、勉強会を行ったり、仕事の面でも様々な形で協働したりすることができているといいます。
LDC修了生に対しては、様々な企業から人材開発・組織開発の求人が寄せられており、こうした求人情報を修了生向けに送付、修了生が個別に応募できるような仕組みもできています。LDC修了生には、日々、多くの求人が寄せられていることから、今、人材開発・組織開発の専門性を持った人が求められている、ということが分かります。
【セカンド・キャリアをスタートした】
実際に転職して、新たなキャリアをスタートさせた人もいます。修了生の段原猛さんは、LDC修了後、転職に成功、セカンドキャリアとして今年の5月から新たな道を歩み始めました。転職にあたっては、採用面接でLDCを修了したことを伝えたところ、「面接官と中原先生の話で盛り上がり、内定につながった」といいます。入社後は人事制度改革のプロジェクトに関わることとなり、様々な場面でLDCの授業で学んだ理論や知識、スキルが活かせているそうです。また、修了後も毎月、LEP(リーダーシップ・エンドレス・プロジェクト)というアラムナイの集まりがあり、お互いに近況を報告したり、相談しあったりしていて、「LDCでの学びを職場で活かせているかどうか、定期的に自身を振り返ることができるペースメーカーのような機会になっています」と話します。
◇在学生・修了生パートクロージング
最後に進行役を務めた在学生2人からの挨拶がありました。
「今日は私たちの話をお聞きくださり、ありがとうございます。LDCに入って半年経ちますが、日々、感じていることを一つみなさんと共有したいと思います。私の好きなことわざに、『早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け』というものがあります。LDCはまさにみんなで遠くに行ける学びの場です。今日の説明会で『チャレンジしよう』と思われた方は、ぜひ一緒に遠くに行く仲間になっていただけたらと思います」
「仕事とプライベートとLDCでの学びを両立させるのは、なかなか大変です。ですが、チャレンジしようと思っている方々にとっては、めちゃくちゃ楽しい場です。好奇心が激しく揺さぶられる場、毎日、インプット、アウトプットを迫られる場、大人が本気でフィードバックし合う場、そうした場に身を置くことによる成長はものすごいものがあります。『今日が人生で一番若い日』と言います。『何を始めるにも遅すぎることは無い』という言葉もあります。実は私と今日スピーカーを務めたもう一人は、二人とも昨年、不合格になり、今年リベンジで入学しています。パッションがあれば、きっと何とかなります。みなさまがチームLDCに加わってくださることを心から楽しみにしています。本日はありがとうございました」
画面には在学生、修了生から下記のような説明会参加者へのメッセージが映し出され、在学生&修了生パートは終了となりました。