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  • 2026.09.01
  • 授業
  • 「戦略人事」について基礎から学ぶ 「戦略的人的資源管理」

1年次春学期の必修科目である「戦略的人的資源管理」は、経営戦略に紐づくかたちでどのように人的資源管理(HRM:Human Resource Management)を行うのか、その基礎から実践までを体系的に学ぶ授業です。人的資源管理とは、人材を経営目標達成のための “資源”として活用する仕組みを指し、人材の採用、配置、育成、評価などの施策すべてが含まれます。授業では、人的資源管理の歴史的変遷の理解から始まり、「戦略、組織、⼈材」についての基礎理論を学ぶほか、ケーススタディや最新事例などを通して実務に生かせる視点を養います。

担当はパーソル総合研究所で上席主任研究員を務める佐々木聡先生。ご専門は経営リーダー育成、人材アセスメント設計・評価、ピープルアナリティクス、組織開発で『日本の人的資本経営が危ない 強みを活かした変革の戦略』(日経BP 日本経済新聞出版)の著書もあります。今回は7月11日(土)14時25分から17時まで行われた第11、12回目のオンライン授業の様子をお届けします。

 

 

リーダーシップスタイルにMBTI

「人材アセスメント技法」をゲーム感覚で学ぶ

 

授業は、直近で先生が気になったテーマを紹介する「今週のトピックス」から始まりました。「今日の授業テーマにドンピシャの内容です」と取り上げたのは、企業から佐々木先生のもとに寄せられたという人材課題についての2つの相談事例です。

 

ひとつめは「地方の中小メーカーから、今後のAI時代を見据え、これまで以上にEQや非認知能力を重視した採用アセスメントについて知りたい」という相談事例。ふたつめは、「医薬品大手企業から、HRBPを設けたが、現場対応など、オペレーションに追われ、ビジネスの強化につながるような動きにつながらない」という相談事例。先生が、それぞれの事例について、その背景や施策間のつながりなどを丁寧に解説しながら、人材課題の読み解き方を伝えていきます。

 

様々な企業事例を通して人的資源管理についての基礎理論を学べるのは、企業の人事コンサルティング経験が豊富な佐々木先生ならではといえます。授業には、人事や人事コンサルティング業務の経験の無い人にとっては耳慣れない専門用語が頻出しますが、先生が自身の実務経験を通じて支援した企業の事例を交えながら丁寧に解説してくださるので、具体的な文脈の中で理解を深めることができます。

 

授業前半に行う第11回目のテーマは「人材アセスメント/アセスメント技法」。はじめに行ったのは、前回からの続きでリーダーシップスタイルに関するアセスメントです。授業では「支持命令型」「ビジョン型」「関係重視型」「民主型」「先導(率先垂範)型」「育成型」の6タイプのフレームを提示。それぞれのタイプについて説明があった後は、「グローバルで活躍するリーダーに最も多いタイプは?」という問いについて、各グループでブレークアウトルームに分かれてディスカッションを行いました。
 
グループ内では「グローバルで活躍するリーダーというと、スティーブ・ジョブスのようなビジョン型じゃないかな?」「多様な人たちが集まる環境で成果を出すには、はっきりとやるべき仕事を伝える必要がある。その場合は指示命令型では?」などと、活発な議論が行われました。

 

 

各グループでのディスカッション後は、佐々木先生が国際比較の調査結果を共有し、「リーダーシップスタイルは地域差が大きく、アジアは指示命令型が高い。EUは先導(率先)・民主・ビジョン型が、北米はビジョン・関係重視・民主型が強いという結果になっています。ただ、成果を上げるリーダーと、成果を上げられないリーダーの比較調査では、ハイパフォーマーは民主・ビジョン・育成型が高く、ローパフォーマーは指示命令・率先型が高いという調査結果が出ていて、これはグローバルだけでなく、日本でも同様の傾向となっています。とはいえ、本来、リーダーシップスタイルに優劣はなく、状況次第で使い分けることが大切です」と解説。

 

先生が「では、どんな状況でどんなリーダーシップスタイルが向いていると思いますか?グループで話し合ってください」と新たな問いを投げかけると、今度は各グループで、状況とリーダーシップスタイルの関係についてディスカッションが始まります。

 

このように、授業中はブレイクアウトルームでの話し合いの機会が頻繁に設けられています。単に授業を聞くだけよりも、受講生同士、それぞれが自分の考えを出し合い、疑問点を話し合ったり教え合ったりすれば、理解が深まりますし、オンライン授業で集中力を保つうえでも効果的です。

 

この日一番に議論が盛り上がったのは、性格特性のアセスメントツールであるMBTIを使った「Guess Who Game」でした。受講生は事前にMBTIの診断を受けておき、グループ内で互いのタイプを予想し合います。入学から3か月が経ち、少しずつお互いのことが分かってきた時期でもあったため、「INTPとは意外ですね」「見るからにENFJだと思っていました」といった声が次々と上がり、どのグループも話が尽きない様子でした。

 

「Guess Who Game」で盛り上がった後は、人材アセスメントの基本を学びます。人材をアセスメントするといっても、行動を見るのか、スキルを見るのか、それとも性格を見るのか、様々な観点があります。人材アセスメントの専門家でもある佐々木先生は、人材のなにをどう評価するのか、適性検査、360度評価などそれぞれのアセスメント手法のメリット、デメリットや状況に応じた使い分け方などを詳しく解説していきます。前半の最後は自社のベンチマーク人材をアセスメントツールで分析し、イノベーション人材の選抜に必要な要件を明確化したうえで、発掘・育成・配置につなげた事例を取り上げながら、実務でアセスメント技法をどう活かすのかを伝えました。

 

授業後半は第12回目の「人事の現在地と10年後の人事」の授業です。将来的に人事はどうなっていくのか、人事機能を俯瞰して捉え、10年後の人事はどうあるべきかを考えます。

授業では様々なデータを参照しながらディスカッションを行い、現在の人事部門が抱える課題を浮き彫りにしていきました。

 

一口に「人事の仕事」といっても、人事制度や人材育成に関わるものから、給与や勤怠に関わるものまで、その範囲は多岐にわたります。佐々木先生は、こうした人事機能それぞれの役割を説明したうえで、多くの日本企業では依然として労務や採用オペレーションに多くのリソースが割かれ、経営戦略に基づいて人材戦略を策定し実行する「攻めの人事=戦略人事」が十分に進展していないことを指摘。過去10年間、日本の戦略人事の進捗はほぼ停滞しており、最新調査でも「人材戦略が経営戦略と紐づいていない」ことが大きな課題となっていることをデータで示しました。また、戦略人事の実現度と、人事担当者の専門性や事業経験、データ活用の度合いには強い相関が見られることから、人事担当者を育成することの重要性を強調しました。

 

そして、“戦略人事”を実現するために、人事機能を戦略に沿った形に最適化していくHRトランスフォーメーションの必要性やHRBPの重要性についても解説。さらに、人事領域におけるAI活用にも議論を広げ、オペレーション業務をAIに代替することで、人間ならではの価値が発揮できる戦略立案や従業員支援へと時間を再配分していくことこそ、未来の人事のあるべき姿ではないかという構想が示されました。

 

佐々木先生は、「日本企業で“戦略人事”が進展していかないのは、そもそも人事パーソンが戦略人事を学ぶ場が無かった、ということがあります。私はパーソル総合研究所で、将来の人事部長、CHROを育成することを目的にしたリーダー育成プログラム『HRリーダーズフォーラム』に9年間携わってきました。その知見を注ぎ込んでつくったこの授業は、まさに“戦略人事”を進めるための授業のようなものです。ですので、この場で学んだみなさんが、事業構想力と事業部門とのコミュニケーション力を備えた“戦略人事の第一人者”として現場をリードしていってくれることを期待しています。1年次のみなさんにお伝えしたいのは、決して孤軍奮闘しないでください、ということです。ここで学ぶ仲間は“戦友”です。同期はもちろん、先生方や先輩、専門家の方々とのつながりを武器にしてください。そして、日本の人的資本経営を強くしていく変革を一緒に進めていきましょう」とのメッセージをいただきました。LDCでの学びは、まだまだ続きます。