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  • 2026.04.28
  • 修了生の声
  • 修了生インタビュー「エンジニア×組織開発で、エンジニアの能力を引き出す組織づくりに取り組みたい」HRテック企業CTOがLDCで学ぶ理由

 

LDC5期修了生 和田哲郎さん(株式会社NEWONE・CTO

 

2026年3月に修了された5期の和田哲郎さんにLDCで学んだ2年間の大学院生活を振り返っていただきました。

 

 

―ご修了おめでとうございます。和田哲郎さんは長年IT業界でエンジニアとして活躍し、現在はHRテック企業のCTOでいらっしゃるということですが、なぜ人材開発、組織開発を勉強しようと思われたのですか?

 

和田さん 20年以上Web開発の現場にいます。エンジニアなので、やはり技術そのものへの関心が強く、自分の開発スキルを上げていくことを一番のモチベーションに続けてきました。ですがマネジメントをするようになり、関心が自然と人の成長や組織へと移って行きました。特に、70名もの大きな開発組織をマネジメントするようになってからは、ミッションが「どうやって良いプロダクトを効率的に作るか」ということよりも、「どうすれば組織をより良くし、結果として良いプロダクトを世の中に送り出せるか」というところに変わっていきました。

 

―印象に残っていることはありますか?

 

和田さん 部門横断の大規模プロジェクトのことが印象に残っています。部門も部署もバラバラな200名が集められ、チームで一つのプロダクトを世に出す、というプロジェクトに入ったのですが、これが全然うまくいかなかったのです。対外的にリリース日も発表しているし、社長からも厳しく言われて、「このままではまずい」ということで、とりあえず関係者を同じフロアに集め、席を近くにしてみました。すると、ただそれだけでコミュニケーションが円滑になり、プロジェクトがスムーズに動き始めたのです。「席を近くしただけで、こんなに変わるんだ!」と衝撃を受けました。今思えば、そもそもメンバー同士のコミュニケーションすらまともにできていなかったのですよね。この経験から、「組織というものには何かしらの法則があるのではないか?」と考えるようになりました。

 

―なるほど。確かに席を近くしただけで変わるのであれば、他にも法則がありそうですよね。

 

和田さん ええ。そこで自分で色々と調べるうちに、「組織開発」という言葉に出会います。「これはおもしろい」と、興味を持ち始めて、いろいろ本を読み始めると、必ずといっていいほど中原淳先生に行き着くんですよね。ですが、本で書かれている通りに実践してみても、なかなか思うようにいきません。やはり、きちんと体系的に学ぶ必要があるのではないか、と感じ始めた頃、LDCという大学院のウェブサイトが出てきて…見た瞬間に「ここに行きたい!」と強く思いました。

 

―ウェブサイトにたどりついていただけて、良かったです!すぐに応募なさったのですか?

 

和田さん はい。2022年の9月の説明会に参加し、翌年1月の試験を受けたのですが、残念ながらその時は落ちてしまいました。その後、1年間しっかり準備をして再受験し、2回目のチャレンジで合格しました。今となっては受験に失敗したことも良かったなと思っています。おかげで「勉強に本気で向き合おう」と思えましたし、素晴らしい同期メンバーと出会うこともできましたから。

 

―LDC入学時、同期の方々に対する第一印象はいかがでしたか。

 

和田さん 同期はみなさん優秀なうえに人間的にも魅力的な人ばかり。最初は「自分はここにいていいのか?来てはいけない世界に来てしまったんじゃないか?」と感じるほど、圧倒されていました。2年間を振り返っても、最後までずっと後ろからみんなについていく、という感覚でした。私はエンジニア出身で、人事の経験もなかったですし、理論や用語にも馴染みがなく、ベースとなる知識や経験が足りていない、という実感がありました。

 

―落ち込むようなこともありましたか?

 

和田さん 入学当初は劣等感でかなり落ち込んでいました。ですが、1年次の春学期に取り組むリーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト(LWP)で大きく変わりました。5人でグループワークに取り組むのですが、当時、私が抱えていた葛藤や悩みをオープンに話したところ、メンバーが真剣に向き合ってくれたのです。自己開示ができたことで、関係性もぐっと深まりましたし、その後の仲間との時間は、自分自身にあった劣等感から立ち直っていく過程だった、という気がしています。

 

―仲間との関わりの中で、特に印象に残っていることはありますか?

 

和田さん たくさんあるのですが、同じグループのメンバーが、私の良いところを具体的に伝えてくれ、「尊敬している」と言ってくれたのは強く印象に残っています。その言葉を聞いて、「この人にそう言ってもらえるなら、これも自分の強みとして自信にしてもいいのかもしれない」と、少しずつ自分を認められるようになっていった気がします。私自身、これまで自身満々で生きてきたわけではありませんでした。部長をやっていても、いつもなにかが足りないような気がしていて、「自分は部長職には向いていないな」などと感じていました。

 

―意外です。これまでのご経歴を拝見した限りでは、とてもそうは思えません。

 

和田 これまでずっとエンジニアをやってきたので、プロダクトをつくるところに関しては自信を持っているのですが、プロダクト開発はチームで行うものです。「どうすれば“開発組織”として成果を最大化できるのか」という点については、自信が持てずにいました。エンジニア職には、人に関心を持っていなかったり、コミュニケーションが苦手だったりする人が比較的多い印象があります。チームとしてうまく協働できれば、もっと価値を発揮できるのに…と、いつももったいなさを感じていました。

 

―この2年間で、なにかご自身が大きく影響を受けた授業などはありますか?

 

和田さん それはもう、たくさんあるのですが、私の中で大きかったのは、2年次に受けた石川淳先生の「リーダーシップの理論」の授業です。リーダーシップに関する様々な論文について調べて発表する授業で、私の担当は、ウォーレン・ベニスという研究者のリーダーシップに関する書籍でした。その本に、「本当のリーダーとは、他者の期待に応えるのではなく、自分自身の信念に基づいて行動するものである」といったことが書かれていたのです。ハッとしました。世の中で言われているような強いリーダーに無理してなる必要はない。自分のことをもっと知って、自分の強みを活かしてリーダーシップを発揮すればいいんだ、とすごく勇気をもらいました。あと、2年次秋の国重浩一先生による「ナラティヴの心理学」の授業も印象に残っています。エンジニア職ということもあり、これまではどうしても正しい、正しくないという視点で判断してしまいがちでした。ですが、人それぞれ多様な視点があり、それぞれに正義がある、ということを知り、「なぜこの人はこんなことを言うのか?」と、ものごとや人の背景にあるものについて、一歩踏み込んで考えられるようになった気がします。

 

―2年次のリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)はどのようなことに取り組まれたのですか?

 

和田さん 『「経営層のサーバント・リーダーシップ開発を通じた組織変革の試み」-変革過渡期における組織の解凍と心理的安全性の再構築-』というテーマで、小規模のSaaS企業の組織変革プロジェクトに介入しました。具体的には、その企業の経営メンバー3名のリーダーシップスタイルに課題があるという仮説を立て、「サーバントリーダーシップ」を身につけてもらうことを通じて、従業員の心理的安全性を高め、組織全体の活性化を目指すといった内容です。

 

―経営層に課題があると指摘し、介入するというのは、ずいぶん勇気が必要だったのではないでしょうか?

 

和田さん おっしゃる通りです。実は、調査の結果から経営層に課題があることは分かっていたにもかかわらず、はじめは課題を従業員側に設定しようとしていました。ですが、先生と個別面談を行うなかで、やはり経営層の課題に向き合わざるをえない、そこから逃げてはいけない、と思うようになりました。そこで、経営メンバーの方々に、定量、定性データを用いてロジカルに組織課題を説明し、「これまでのリーダースタイルをアップデートしていきましょう」とお伝えすることで、最終的には受け入れていただきました。

 

―役員の方々を説得したコミュニケーション力、素晴らしいですね。経営層の方々には具体的にどんな施策を行ったのですか?

 

和田さん まずは「サーバント・リーダーシップ」の理論についてお伝えし、「傾聴」「フィードバック」「フィードフォワード」のスキルを身につけていただくための研修などを全部で8回実施しました。介入後の従業員インタビューでは、「経営層に変化の兆しが見えてきた」「少しずつ意見が言えるようになった」といった声が聞かれるようになりました。また、経営層の方々からも「1on1ミーティングを通じてこれまで聞けなかった従業員の本音を少しずつ聞けるようになった」などと、喜んでいただけて良かったです。 

 

―この2年間を振り返ってみていかがですか?

 

和田さん この2年間に学んだことすべてが良かったなと思っています。終わってみてはじめて、全てのカリキュラムがLFPにつながっていることを実感しました。LDCを修了した今、はっきりしているのは、今後は「エンジニア×組織開発」を自分のテーマにして取り組んでいきたい、という思いです。以前は「自分にそんなことができるはずがない」と自信を持てずにいましたが、今は心の底からそう思えるようになっています。こんな風に思えるようになっているのも、同期のおかげ。心から感謝しています。大人になってから、こんなにも信頼できる仲間に出会えるなんて思ってもみませんでした。課題に追われるのはしんどかったですが、自分なりの強みを見つけることもできて、本当に幸せな、素晴らしい2年間でした。そして、これからも学び続けていこう、と思っています。

 

―最後にLDC入学を検討されている方にメッセージをお願いします。

 

和田さん 人と組織に興味がある人には、もちろん向いていると思いますが、それ以上に、今の現場に課題感を強く感じている方、アカデミックな知見を持った実践者になりたい方に、ぜひ来ていただきたいです。また、エンジニアの方にもおすすめしたいですね。人材開発、組織開発の領域でも、エンジニア的な思考ができる人が求められていますし、昨今では「ストーリーが無いプロダクトは使ってもらえない」と言われていて、LDCでの学びは「ストーリーを紡ぐ力」を育み、エンジニアとしての幅を広げることにもつながるように思います。