リーダーシップ開発コース(LDC)における学びの場づくりを支えてきたLDC事務局ですが、2025年4月から体制が大きく変わりました。LDC事務局は、いったいどうなっていくのか?前編は加藤走さん、鹿島千裕さんにお話を伺ってきました。

LDC事務局の体制変更
2025年4月よりLDC事務局は、前年から事務局を務めている小澤佑季さんと駒崎かんなさんのお二人が事務局業務を担当し、これまでLDC事務局を担当し4月から教員に役職が変わる加藤走さんが教員として事務局のサポート役を担当するという体制になります。
開講前から事務局としてLDCを支えてきた加藤走さんは、業務をこなしながら、自らも大学院で学び続けてきました。2025年3月に経営学研究科博士課程 後期課程を修了し、2025年4月より立教大学 経営学部経営学科・経営学研究科の助教として着任し、LDCの授業も担当する予定です。
2021年からLDC事務局を務めた鹿島千裕さんは3月末で退職し、4月からはLDCに入学、6期生として学ぶ側に加わります。鹿島さんに代わってLDC事務局に着任するのが、3月に修了したばかりのLDC4期生の駒崎かんなさんです。
事務局がLDCの教員やLDC生になり、LDC修了生が事務局になる…という変化が起きているLDC事務局。いったいどうなっているのでしょうか?お一人ずつお話を伺いました。

加藤走さん
LDC事務局⇒LDC教員に
―加藤さんは2019年から事務局として、LDCの立ち上げ時から関わっていらっしゃいます。LDCに関わることになった経緯を教えてください。
加藤 私は立教大学経営学部出身で、大学時代は経営学部の学部生を対象としたBLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム、以下BLP)の立ち上げ期にSA(スチューデント・アシスタント、以下SA)として関わっていました。卒業後、社会人経験を経て、BLPの事務局の仕事を5年ほど担当したときに、中原淳先生から「これから社会人向けの大学院を立ち上げるので事務局として加わってほしい」とオファーいただいたのがきっかけです。
―加藤さんが 経営学研究科博士課程に入学したのも同じタイミングでした。大学院で研究をしたいと思われたのはなぜですか?
加藤 これも中原先生からのアドバイスがきっかけになっています。BLP事務局の仕事はとてもやりがいがあり、充実していたのですが、今後のキャリアのためには、もっと専門性を磨いていきたいと思うようになり、中原先生にご相談したところ、「LDCの立ち上げと並行して大学院でリーダーシップ開発の研究をやってはどうか?」とアドバイスいただいたのです。私自身、リーダーシップ教育について大きな価値を感じていたものの、リーダーシップ教育とはいったい何を開発しているものなのか、学術的にはどのような議論がなされているのか 、というところは理解が及んでいないという感覚があり、それを研究し、論文としてまとめたい、という思いがありました。
―LDC立ち上げにあたって、苦労したことはなんですか?
加藤 対象が学部生ではなく社会人それもプロフェッショナルの方々が来る大学院ということで、そうした方々の期待するサービスレベルに合わせて大学院を運営していく、ということが一番のチャレンジでした。自分自身が大学院に通いながら仕事をしていたので、どのような仕組みやサポートがあれば社会人が学びやすいのか、ということは常に意識していました。
―ご自身も社会人大学院生であったことがLDCのコース運営にも生かされていたのですね。この5年間を振り返って、大変だったことは?
加藤 やはり初年度のコースの立ち上げは大変でしたね。コロナ禍で急遽オンラインで開講することになりましたが 、フルオンラインで大学院を運営し授業を実施する仕組みを整えながら新コースを作っていくことになったため 、先生や在学生の方々から寄せられる様々なご意見に対して、一つ一つ正面から向き合って取り組んでいきました。しっかりコミュニケーションを取りながら対応していくことで、教員・ 学生・事務局という垣根を越えて、共に学びの場をつくる仲間としての関係を築くことができましたし、結果的にプロフェッショナルの方々にも満足していただける質の高い学びの環境をつくり出せたことは、自信につながっています。
―事務局をやっていてやりがいを感じるのはどんな時ですか?
加藤 在学生の中には、2年の間に、単に知識を身につけるだけではなく、人との関わり方や言動が変わっていく方もいらっしゃいます。一人ひとりが学びを通して成長していく過程を間近で見ることができるのは、事務局ならではの喜びです。あと、在学生の方々との関係性が、修了後もずっと続いている、というのも嬉しいことですね。
―次に、加藤さんの大学院での研究内容について教えてください。
加藤 BLP事務局で仕事をしていたこともあり、研究内容は一貫して大学生を対象にしたリーダーシップ開発です。海外でもリーダーシップの研究と比較すると、リーダーシップ開発の研究は量がかなり絞られるのですが、こと日本国内ではリーダーシップ“開発”についての研究はかなり限られていました 。そのため、リーダーシップ教育によって学生にどのような変化が起きているのかを 、データに基づき学術的に論じていくことが私の挑戦でした。
―4月からは経営学部経営学研究科の助教となり、教員としてのキャリアを歩まれることになります。LDCの授業も担当なさるとのことですが?
加藤 はい。LDCでは1年次春学期のリーダーシップ教育論を担当し、 1年次秋学期のデータアナリティクス演習を山口先生、廣川先生と共に担当します。また、2年次のLFP(リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト)の面談担当教員を担当します 。リーダーシップ教育論では、リーダーシップに関わる様々な論文を参照しつつ、リーダーシップやリーダーシップ開発の扱っている研究領域の広さを理解していただけるようにしたいと考えています。大学院生として論文を読むことに慣れていただく、ということも目的の1つです。
―最後にLDC生に一言
加藤 LDCは6年目になりますが、先生方も事務局もメンバーが入れ変わり、中原先生はサバティカルでお休み…ということで、LDCの第2章が始まっていくような感覚です。新入生の皆さんと共に新たな学びの場づくりを楽しんでいければ、と思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

鹿島千裕さん
事務局⇒LDC6期に入学
―LDC6期へのご入学、おめでとうございます!まずは、鹿島さんがLDC事務局で働くようになった経緯を教えてください。
鹿島 私も立教大学経営学部出身で、学部時代同じくSAも経験しました。SAを通じて人の成長に関わることにやりがいを感じ 、卒業後はリクルートで人材領域の仕事に就きました。人材領域、教育領域に興味を持っていた為、いつかは大学教育にも携わりたいという思いがあり、学生時代お世話になっていた加藤さんに連絡を取ったところ、 LDC事務局のお話をいただきました。 当時はリクルートを辞めて個人事業主として働いており、働き方の条件も合ったので、ダブルワークの形で働き始めることになりました。
―事務局で働き始めて、いかがでしたか?
鹿島 コースの運営を教職員が一丸となって進めていく姿にとても感動しました。LDCでは一年に一度教職員が集まり、コース運営における各授業の連携や受講生にとってより良い学びを提供するための振り返り、意見出しを行なっています。また、教職員も受講生からフィードバックを受け取り、毎年改善をしながら一緒にコースを創っています。LDCに関わる全員が主体的に関わっているので、先生方の伝えたいことや意図を、しっかり受講生にお伝えできるようなハブになることがとてもやりがいでした。
―事務局での仕事を通じて得られたものはなんですか?
鹿島 何より、LDCコースの軸である人材開発・組織開発の知見について、深めることができました。私の担当業務である授業サポートを行うためにも、まずはこの領域について自身で学んだり、研修への参加、意識的な実践を行なっていました。そして事務局内では、一週間で得た気付きや学びをアウトプットする「5分間リフレクション」の場を毎週設け、メンバー同士で内省を深める時間を取ることで、自分の経験が学習に繋がるサイクルを作っていました。これにより、自分自身の学びや知見が深まるだけでなく、こういった経験学習サイクルや対話を通じてチームが作られていく課程そのものを経験することが出来、この領域に関わる上での財産となっています。
―そこからLDCを受験しようと思われたのはなぜですか?
鹿島 理由は2つあります。1つ目は、そもそもLDC事務局に関わり始めた時点で、人材開発・組織開発の領域には強い興味を持っていました。サポートをしている間に、自分も学びにどっぷり浸かりたいと思いました。
もう1つは、30代 になり、今後のキャリアをどうしようか悩み 、様々な選択肢を比較検討していくうち、どんどんわからなくなってきて、「最後は直感で一番楽しそうなことを選ぼう 」と思ったのが正直なところです(笑)。LDC生たちがいきいきと学び、驚くほど成長していく姿をみていたので、憧れもありました。
―事務局をやっていた人が中に入ってみたいと思う大学院というのは、素晴らしいですね。鹿島さんは事務局業務のかたわら、人事のお仕事をなさっていたとか?
鹿島 ベンチャー企業で約2年間、人事業務を行っていました。LDCでの授業サポートの仕事をするうち、この領域についてもっと理解を深めたいという思いが強くなり、ご縁があったところで、副業として人事の仕事をさせていただいていました。 組織人事や採用業務に関わり、LDC事務局で学んだことを活かしつつ、実務経験を積むことができました。小さな組織ではありましたが、組織の土台を築いていくような感覚があり、人が事業をつくっているということを肌で感じて、この領域への関心がさらに高まりました。
―これから始まる2年間への抱負を聞かせてください。
鹿島 学ぶことを心から楽しみたい、と思っています。 私はつい「やらねば」と自分を追い込みがちなので、その思いを手放し、 自らの意思で選んでここにきたのだ、という思いをかみしめながら、仲間たちと共に2年間楽しんで学びたいと思っています。