立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース(LDC)主査を務める中原淳教授が2025年度、1年間の研究専念期間(以下、サバティカル)を取得する予定です。
サバティカルとは、大学教員が自身の研究のために与えられる期間のことで、立教大学では7年に1度、1年間取得することが定められています。そのため、立教大学経営学部の担当授業、ゼミ及びリーダーシップ開発コース(LDC)の担当授業からも、主要担当者としては1年間外れる予定です(オンデマンド講義の動画内では登壇します)。
なお、中原教授が担当していたリーダーシップ・ウエルカム・プロジェクト、人材開発・組織開発論1・2、については田中聡准教授と藤澤広美助教が共に担当し、リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト1・2についてはこれまで担当されていた石川淳教授、田中聡准教授、藤澤広美助教が引き続き担当する予定です。また、LDC主査を田中聡准教授が担当することを予定しています。
中原教授がサバティカルを取得することについて、気になるところを直接、中原淳教授にお聞きしました。
―中原先生がサバティカルを1年間取得する予定ということで、コース運営に支障はないのか、担当授業はどうなるのか、といったことは多くの方が気にするところかと思いますが、いかがですか?
中原 まずは、サバティカルについて、ご説明させてください。サバティカルとは、大学の研究者が最先端の知見に触れたり、自身の研究を振り返って今後の方向性を見定めるために「学び直し」たりする期間として設けられているものです。研究者にも学び直しが必要です。みなさまの学びをさらに豊かなものとしていくために、1年間、しっかりと学び直して帰ってきたいと思っておりますので、どうぞご理解ください。
このサバティカルについては、いつか取得しなければならないことはわかっていましたので、みなさまの学びの質を担保できるよう、実は数年ほど前から下記の3つの点を意識して、その準備を重ねてきました。
①教育コンテンツのオンデマンド化
現在、私が担当する授業で行っている講義はほぼ全てオンデマンド化されており、授業時間は基本的に話し合いや発表などに充てられています。もちろん、ファシリテーションなどは担当の先生が変わりますので、多少違ったものになるかとは思いますが、学びの質が下がるようなことは全くないと考えています。
②授業内容の教科書づくり
昨年上梓した『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』はLDCの人材開発・組織開発論の教科書として著した書籍です。授業内容を網羅した教科書をつくったことで、授業内容についての理解は深めやすくなったのではないかと考えています。
③チームティーチング体制の構築
そもそもLDCでは、立ち上げ当初から一人の教員のもとで学ぶのではなく、教員が全員でチームとして指導を行う、チームティーチング体制をとっています。開講時から毎年改善が重ねられ、5年目に入った今、このチームティーチング体制はとてもいい形で機能しているように感じます。
もちろん、私が行っていた面談での指導や授業のファシリテーションの部分は他の先生方に担っていただく必要がありますが、これまでのLDCにおける学びが損なわれるようなことは決してありません。その点はご安心ください。むしろ私以外の先生方とLDC生のみなさんとで、これまでに無かったようなLDCの新たな価値を創り出す機会になるはずです。
―中原先生が担当されていた授業を担当する田中聡准教授と藤澤広美助教について教えてください。
中原 田中聡准教授には、現在、リーダーシップ・ウエルカム・プロジェクト、データアナリティクス演習、チームワーク論、リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト1・2を担当していただいております。田中先生は私が東大時代に修士課程、博士課程の指導を主に行いました。専門は人材マネジメントで、特に経営者、管理職の育成に強い方です。海外の知見にも明るく、また最新のデータ分析の知見もお持ちで、授業の担当者として適任だと感じています。LDCに新しい流れをつくってくださる方だと思っておりますので、どうぞご期待ください。
藤澤広美先生は、LDCの立ち上げ時からこれまで、共にLDCの授業をつくってきた同志のような存在です。これまでの経緯やLDCが大切にしてきた価値観を誰よりもよく知る方の一人ですので、安心してお任せすることができます。人材マネジメント・人材育成、キャリア教育がご専門で、いずれも、LDCと縁が深い領域です。
お二人には、これを機にこれからの人材開発・組織開発を担っていく世代の方々に響くよう、授業コンテンツをアップデートしていただくことを期待しています。
―先生ご自身にとって、サバティカルはどのようなものになりそうですか?
中原 この度のサバティカルを、私は「第3の創業」に向けての準備期間と位置付けています。
私の「第1の創業」は、東京大学時代に自分の研究室、ゼミをつくった時のことです。ここでは10名弱の博士号取得者、20名程度の修士号取得者を輩出できました。
「第2の創業」は7年前に立教大学に移り、沢山の教員、職員の方々のお力をお借りして、2020年に日本で唯一の人材開発・組織開発・リーダーシップ開発の大学院であるLDCを立ち上げた時です。こちらではコース制度のもと、多くの教職員と協働し、年間20名の修士学生を輩出しています。博士課程に関しては、立教就任後、2名を輩出しました。
気づけば、LDCからも、博士後期課程の中原研究室からも、たくさんの方が巣立ち、ご自身の著書を上梓したり、大学教員になったり、企業の人事の責任者になったりと、大いに活躍なさっています。
さらに2024年8月、立教大学大学院経営学研究科(LDCコースも含む)はAACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)によるビジネス教育の国際認証を取得し、新たなフェーズに入りました。サバティカルは今後の私の研究の方向性を定めるうえで大切な1年になると考えています。
―どこでどのような研究をされる予定ですか?また、海外にいらっしゃるご予定なのでしょうか?
中原 現在計画中ですので、完全には決まっていません。ただ、我が家は共働きで子育て中ですので、丸々1年間海外の大学へ行く、といったことは難しいです。そこで、「旅するサバティカル」というコンセプトで、これまで諦めていた国内外の様々な研究室や研究会の年次大会などにあちこち旅をしながら訪れて学ぼうと考えています。
自分自身の研究の方向性としては、定量的な研究から定性的な研究へと少しだけ軸足を移そうと思っています。もちろん研究室においては定量的研究も行います。昨今は量的研究が重視される傾向にありますが、実際には質的研究でしか明らかにできないこともあり、そのバランスが取れるようにしていきたいのです。具体的には国内の大学の招聘教授にとなり、ある先生のもとで授業やゼミに出させていただきながら学ぶ予定です。研究成果をまた社会に還元できたらと考えています。
最近は忙しすぎて、しっかりと研究に時間を取ることができずにいましたので、この1年間は、じっくりと研究に時間を費やし、しっかりと学び直したいです。とはいえ、基本的には国内にいることの方が多いかと思いますので、今後の予定次第ではありますが、LDCの最終成果発表会などに参加してフィードバックさせていただきたくことも考えています。
―2026年4月から立教大学に復帰ということになりますが、戻られてからはどんな風になりそうですか?
中原 立教大学に復帰したのちは、新しい学びを得て、新しい書籍などを書き始めたりすることになるのではないかと想像しています。この1年間の学びを形にして、みなさんにお届けできる“新しいなにか”を持って帰ってきます。