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  • 2024.05.29
  • 修了生の声
  • 修了生に聞いた!LDC最後の壁、LFPプロジェクト報告書執筆物語

リーダーシップ開発・人材開発・組織開発を専門的に学べる大学院、リーダーシップ開発コース(LDC)を無事に修了し、経営学修士の学位を取得するためには、乗り越えるべき最後の壁!?があります。それは、2年間の学びの集大成ともいえるリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)のプロジェクト報告書の執筆です。


リーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)とは、学生が一人ひとり、クライアント組織を探し、対象組織に対して大学院で学んだ知識や経験をもとに人材開発・組織開発・リーダーシップ開発の課題解決を行い、その成果をプロジェクト報告書としてまとめるもので、2年次の中心となる活動です。


LFPのプロジェクト報告書は単なる活動報告書ではありません。3万字以上の論理性と信頼性のあるアカデミックペーパーの執筆が求められます。そのため、このプロジェクト報告書の執筆が、毎年、最後の高い壁となってLDC生の前に立ちはだかっているというわけです。


修了生たちはこの最後の壁をどのように乗り越えたのでしょうか?2024年3月に修了したLDC3期修了生の橋本孝さん、楊典子さん、畑中亮介さん、鈴木七穂さんの4名に、LFPのプロジェクト報告書を執筆し、提出するまでのお話を伺いました。




◇プロジェクト報告書は「とりあえず書き始めるべし」


―みなさま、LDC修了おめでとうございます。今日はリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)とプロジェクト報告書の執筆について、お話いただけたらと思います。まずは、ご自身が取り組んだLFPの概要とおよその執筆スケジュールについて教えてください。


橋本孝さん(以下、橋本さん) 地方の中小企業支援を行う団体で、組織の課題解決のため、理念についての理解を深め、それぞれがどんな行動ができるかを考え、自分の仕事に落とし込むためのワークショップを企画しました。9月頃までにワークショップを終え、10月に効果検証を行いました。
プロジェクト報告書は「とりあえず書き出そう」と思い、9月頃から書き始めましたが、本格的に執筆を始めたのは10月以降です。年末ごろにはできあがってきて、読み直して年始に完成、といった感じでした。


楊典子さん(以下、楊さん) 企業のバックオフィスチームを対象にメンバーの自己効力感を高めるための取り組みを行いました。プロジェクト自体は1年次の1月頃から始めたのですが、課題特定のために、メンバー全員にインタビューしていったところ、いろんな課題が見えてきて、何を課題にするのか非常に迷いました。7月に一旦方針を固めたものの、状況も変わってきたため、8月にさらに方針転換するなど、始めるまでがバタバタでした。
プロジェクト報告書の執筆は、「書けるところだけでも早めに書き出そう」と7月の中間報告後に企業概要などから書きはじめました。1万字ほど書けたところで、プレッシャーがぐっと減ったことを覚えています。その後も書けるところだけはコツコツと書きつつ、取り組み自体が後ろ倒しになってしまったので、第一版ができ上ったのは12月でした。その後、みんなにフィードバックしてもらって、誤字脱字や文章を直し、〆切の1月8日に無事提出することができました。


畑中亮介さん(以下、畑中さん) 企業の管理部門を対象として、組織課題解決のため、ワーク・エンゲージメントを高め、連携して自律的に動くことができるようになることを目指し、9月から10月にかけてジョブ・クラフティングのワークショップを企画しました。
プロジェクト報告書の執筆自体は8月から始め、11月中にほぼ書き上げていました。まずはいろんなところにメモしておいた内容を全て報告書上に並べて書けるところだけを書いていき、とりあえず最後まで構成を作った後に細かい箇所を埋めていく、といった方法でやっていきました。プロジェクトの進捗は捗々しくなかったのですが、ワークショップ実施までに少し時間があったので、その間に書けるだけ書いておこうと早め早めに進めていくようにしていました。


鈴木七穂さん(以下、鈴木さん) 企業のマネジャー層を対象に、組織課題解決のため、一般社員との関わり方、マネジメントを改善し、一般社員のストレス軽減を図る取り組みを行いました。
執筆を始めたのは10月末でした。といっても、課題を特定し、取り組みを始めたのが9月から10月、介入の効果検証を行ったのが11月末でしたので、ギアが入ったのはその後です。12月はトップスピードで書いていって、大筋出来上がったのが年末でした。そこから手直しをして、年明けに無事提出することができました。



◇プロジェクト報告書は相互フィードバックで質を高める


―LFPで一番大変だったことはなんですか?

橋本さん クライアントは1年次のときに決まっていたのですが、2年次の4月に転勤になってしまい、クライアント組織のある場所から離れてしまったことです。プロジェクト自体はリモートで進めていきましたが、ワークショップは現地で行ったので、前日の午後まで仕事をやって新幹線移動し、朝からワークショップをやって…とハードスケジュールになってしまい大変でした。9月中旬だったので、暑さもきつくて…。ワークショップ後に体調を崩しました。あと、効果検証も大変でしたね。定性調査をやったのですが、インタビューの対象が8人いたので、全てを文字起こしして分析するのには相当時間がかかりました。
ありがたかったのは「朝活」です。LDC生の中でも比較的朝が強い人で朝5時半にZOOMで集まり、一言二言声をかけあった後は画面オフにして1時間ほど、黙々とそれぞれの作業をする朝活を、10月頃から毎日やっていました。同期の3、4人の他、「ブログを書くから」とアラムナイの方もいました。みなさんが5時半に集まっているので、それがプレッシャーになって起きられましたし、毎朝、作業ができる時間が持てたのは大きかったです。平日だけでなく、土日も含めて毎日やっていて、土曜朝は少し長く時間を取って、進捗について話したり、アラムナイの方にいろいろ相談したりすることもありました。


―「朝活」いいですね!みんなが集まっていたら早起きできそうです。楊さんが、LFPで一番大変だったことはなんですか?

楊さん いろいろあったのですが、特に大変だったのは、プロジェクトに向き合うマインドセットの切り替えでした。プロジェクトを始めた当初は、ファイナル・プロジェクトについて、「プロジェクトをやって、それを報告書という形で記録に残すもの」といったイメージを持っていました。しかし、先生方との定期的な面談を通して、LFPは「アカデミックプラクティショナーになるためのプロジェクト」であり、プロジェクト報告書では先行研究も踏まえたうえで、なぜこれが解くべき課題なのか、なぜ効果が出るのか?といったことをロジカルに紡いでいかなければならないのだ、ということが徐々に分かってきました。結局、マインドセットが「報告書」から「アカデミックペーパー」に切り変わるまで数カ月かかってしまったのですが、それを乗り越えた時には、パラダイムチェンジのようなことが起きました。先行研究や理論を丁寧に見ながらロジックを紡いでいくことが逆に楽しくなってきたのです。しまいには「後期課程に入ってもっと研究を続けたい」と思うようになりました。
もう1つ大変だったのは、データ分析です。量的研究だったのですが、データが揃ったのが11月に入ってからで、そこから分析を始めたのですが、やればやるほど気になることが出てきてしまって…。書き終わった今もデータ分析については「もっとたっぷり時間をかけてやれたら良かったな」と少し心残りがあります。


―楊さんは同期メンバーと集まって執筆する、などということはありましたか?

楊さん 同期に同い年のメンバーが3人いるのですが、そのメンバーで週に1度ズームで1時間半ほど集まって、お互いの近況を話したり、進捗の共有をしたりしていました。ワークショップについていいアイディアを出してくれたり、時には愚痴や悩みを聞いてもらったり、レビューしあったり。知恵袋がたくさんあるような感じで心強く、励まし合いながら進めることができました。
同期に助けられたことはもう数えきれないほどたくさんありました。特にありがたかったのは、フィードバックです。12月に第一版を書き上げたのですが、第一版を書き上げた時というのは、なにかもう最高のものを書き上げたみたいな変な高揚感があるんです。その第一版を、畑中さんが丁寧にレビューしてくださったのです。おかげで、2段階、3段階位ブラッシュアップすることができました。そんなことがあったので、恩返しじゃないですけど、私もできる限り他の人の報告書を読んでフィードバックする、ということをさせていただきました。


―全員がライバル、というのではなく、フィードバックをし合うことで、共に質を高めていくことができた、というのはフィードバックを通して学び合ってきたLDCならではですね。畑中さんは、いかがでしたか?

畑中さん 大変だったのは、一時期クライアントと噛み合わなくなり、方向性で足踏みをしてしまったことです。サーベイを通して見えてきた結果を、クライアントに率直にお伝えしたところ、先方からネガティブに捉えられてしまったのです。アプローチを変え、再提案して方向性が定まったのは8月後半のことでした。
プロジェクトの方が足踏み状態になっていたため、執筆の方は書けるところはできる限りやってしまいたいと思い、8月中は出勤前に毎朝5時とか6時から一人でプロジェクト報告書を書いていました。最後まで書き終えた時にはある種の高揚感を覚えたのですが、一方で、穴だらけだったのも分かっていました。そんな時にアラムナイの方々が参加されるフィードバック会があって、2期の方にお見せしたら、非常に細かく読んでくださり、痛いフィードバックをたくさんいただけて、それが本当にありがたかったです。フィードバック後は内容ががらりと変わって、一気にクオリティが上がりました。そんな経験があったので、自分の執筆の方で忙しくはありましたが、同期の他の方のレビューも積極的に引き受けるようにしました。実際、他の方の報告書を読みながら、気づくことも多くあり、最後はそれを参考にしながら自分の報告書もブラッシュアップしていくことができました。



◇互いに学び合いながら走り切れ!


―鈴木さんはプロジェクトの方が思うように進まなかったことがあった、とのことですが?

鈴木さん はい。一時期、クライアント組織の担当者の方と連絡がつかなくなってしまったことがあったのです。どうやらその担当者の方が多忙になってしまい、こちらのプロジェクトまで手が回らなくなっていたようなので、後に連絡がついて取り組みを続けることはできたのですが、当時は途方に暮れていました。同期のSlackに書き込むこともできず、存在を消していたところ、そうした私に気づいた同期の一人が声をかけてくれました。そのことがきっかけで、週1~2回ほどシェアオフィスなどに集まり、同期と対面で合って一緒に進めていく「夜活」に参加するようになりました。勤務地が近い人同士で集まり、だいたい仕事終わりの19時頃からシェアオフィスが閉まる23時半ごろまでやっていました。プロジェクトが進捗せずSlack上で交わされる同期の会話についていけず、焦りを感じていた私にとって、リアルに集まって話せるような機会があったのは心強く、プロジェクトを進めて行くうえでとてもありがたかったです。


―それは本当に救われるような思いですね。「朝活」に「夜活」など、みんなで乗り切れるよう、いろんな活動があちこちで生まれていたんですね。

楊さん 後半は、橋本さんがまるで駅伝の監督のように、みんなが落ちこぼれないように積極的に声をかけてくださったんです。「困ったらこのZOOMにアクセスするように」という「バーチャル院生室」をやってくださり、そこでみんなで相談しあったり、確認しあったりしていました。1月8日の提出日の夜は、橋本さんを中心にみんなで集まろう、ということになり、リモートでお疲れ様会をやりました。そんなこともあって、橋本さんはみんなから「監督」と呼ばれるようになりました(笑)。


橋本さん 「誰一人とりこぼさない」のが3期の良さです。3期のみなさんは「みんなで走りきるんだ」という意識が強くあって、「研究書ブートキャンプ」など、自発的にオンライン、リアルでの勉強会や相談会を度々開くなど、互いに学び合いながら走り切った感じがあります。提出後も口頭試問のある最終報告会に向けて「パワポのつくり方講座」をやりました。その後の飲み会で「お揃いのトレーナーをつくり、口頭試問のある最終報告会の時に全員で着て、たすきリレーをしよう」といった話が出てきて、「本当に全員申し込むかな?」と思っていたのですが、蓋を開けてみたら全員が申し込んでいて、ここでも誰一人とりこぼさない(笑)。本当にまとまりのいい代だったと思います。


楊さん 3期の良さは、役割が固定しておらず、全員がリーダーシップを発揮して、自分ができること、やりたいことをするし、みんながそれを応援する、というところです。みんながそれぞれ、できる範囲できることをやってチームに貢献したい、というのがあり、それが無理なく噛み合って進んで行ったような感覚があります。



◇個人プロジェクトだけど、一人じゃない


―素晴らしいチームワークでしたね。最後に、改めてLFP全体を通しての感想をいただけたらと思います。

橋本さん 3期生のヨコのまとまりも良かったのですが、アラムナイの先輩方や後輩にあたる4期生の方々も含めたタテの一体感というものもすごくあって、みなさんに応援していただいたことでゴールできた、という感覚があります。ですので、我々も恩返しじゃないですけど、4期生の方々に対して、できることをやっていけたら、と思っています。


楊さん プロジェクト報告書執筆では、いろんな方々からフィードバックをいただけたことで、ブラッシュアップすることができたのですが、今思うと、そうしたフィードバックをもらえる環境があり、そうしたフィードバックを活かせるマインドセットが自分にあったということでもあります。それはまさに入学時から培われた信頼感があってのことであり、それが最後に花開くのだな、と改めて感じました。個人的には自分の報告書について、力不足や未熟さ、もっとできたのではないか、といった悔しさもあります。ですが、その思いが、「さらに研究を続けてきちんとしたものを書きたい、博士課程にいきたい」という思いにつながっています。そう思うと、ファイナル・プロジェクトは自分の未来を切り拓く機会でもあったのかもしれません。


畑中さん 振り返ってみると、ファイナル・プロジェクトにおけるチームワークというのは、やはりこの2年間一緒に過ごしてきたLDCでの活動の集大成みたいな感覚があります。LDC1年目では、ここまでできなかったように思います。やはり最後の1年をみんなでがんばってきて、お互いの状況もなんとなくわかっているし、それぞれが何かしらを乗り越えてきている。だからこそ、「最後はみんなで助け合って乗り越えよう」ということになり、それがちょうど箱根駅伝と重なり、最終報告会で、お揃いのトレーナーを着て、みんなでたすきリレーをしよう、といった話にまでなったんです。先生方はちょっと驚いていましたが(笑)。個人的には、論理的に文章を書く経験は初めてだったのですが、書いて良かったです。論理的に考える、というところがすごく鍛えられた気がしていて、実務で施策をやるような時に、「なぜやるのか」と考える癖がついたし、そうしたことを考えるための視点を培うことができたように思います。


鈴木さん 2年間の集大成、というのはまさにそうで、2年間やってきたからこそ全員で修了するんだ、といった思いを共有することができ、私はその思いに背中を押されて修了することができたんだ、と感じています。「LFPは個人プロジェクトだ」と言われていたので、なんとなく個人個人で進めなければならない、と思っていたのですが、自分一人では絶対にできなかったように思います。振り返れば、本当にいろんな人に助けてもらったり、背中を押してもらったり、個人プロジェクトだけれど、一人じゃなかったです。