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  • 2023.12.25
  • 在学生の声
  • LDC在学生インタビュー「子育てとLDC、両立できますか?」

リーダーシップ開発コース(LDC)には、小さなお子さんの子育て中という方もいます。オンラインで学べる大学院ということで、通学の必要はないものの、果たして仕事と家庭と勉強の両立はどのようになさっているのでしょうか。小さなお子さんを育てているLDC2年次の佐久間志帆さん、1年次の湯浅冴華さんのお二人に、子育てとLDCの両立について、お話を伺いました。

左から佐久間志帆さん、湯浅冴華さん



◇妊活に振り切るため、会社を辞め、LDCへ


―本日はお忙しいところ、ありがとうございます。佐久間さんは、今年お子さんが生まれたばかりとお聞きしましたが?

佐久間さん(以下敬称略):はい。今年の2月末に第一子を出産しまして、今、8か月です。


―では今、育休中ということですか?

佐久間:実は妊活に振り切ろうと決意し、会社を辞めてLDCに入学したところ、1年次の夏頃に妊娠し、翌年の2月に出産をした、という流れになります。今は仕事をしていないので、自主育休みたいな形です(笑)。


―そうだったのですね。それはおめでとうございます!どのような経緯でLDC入学を決断されたのですか?

佐久間:私は、新卒で人材系の会社に入社し5年半勤め、もっと仕事の幅を広げたいと、人事系コンサルティングの会社に転職し2年半、一貫してHR領域に関わる仕事をしてきました。その中で、多くの実践知を獲得できている感覚はあったのですが、一方でどこかモヤモヤ感を感じていました。というのも、これはただ社内の知見を目の前の課題に当てはめてやっているだけなのではないか?本当にこれはクライアントにとって最適な提案なのか?という疑問が常にあり、目の前のクライアントに提供するソリューションに確信を持てずにいたところがあったからです。そのため、しっかりと体系的に学び、アカデミックの知見も取り入れることで、人と組織の領域のプロフェッショナルになったと胸を張って言えるようになりたい、と思っていました。


―なるほど。そこで妊活をしつつLDCで学ぼうと思われたわけですね。

佐久間:はい。結婚は比較的早かったのですが、しばらくは仕事に専念していて、転職する前頃から子どものことを考えるようになりました。転職後は仕事しながら妊活をしていたのですが、良い結果が得らず、このままどちらも中途半端にするのも良くないと思い、期限を決めて妊活に振り切ってみよう、と仕事を辞める決意をしました。しかし、妊活に振り切って何もしない、というのは自分としても前に進んでいない感覚があって嫌でしたし、恐さもありました。「妊活しながら、少しでも自分らしく前に進んでいたい」と思い、LDCで学ぶ、という選択肢を取りました。実際、会社を辞めても孤独になることなく日々学ぶことができたのは、とても良かったです。


―なるほど。妊活は今しかできない、と頭では分かっていても、前に進んでいる感覚が欲しいという気持ち、理解できる気がします。




◇ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)と組織開発、2つの軸が重なり、LDCへ


―湯浅冴華さんは、お子さんがお二人いらっしゃるのでしたよね。

湯浅さん(以下敬称略):はい。上の子が今年4歳で年少です。下の子を昨年10月に出産し、今ちょうど1歳です。満1歳のタイミングで、職場復帰することになり、現在、慣らし保育をしているところです。


―産後2カ月ほどで入学試験を受け、育休中に入学されたというわけですね。湯浅さんはなぜLDCで学ぼうと思われたのですか?

湯浅:大きく2つの軸があり、その軸が交差したところがLDCだったと考えています。1つめの軸は20代の頃に経験した大きなできごとに起因するものです。私には股関節の病気があり、その病気が娘にも遺伝しており、さらに夫は脊髄損傷で車椅子ユーザーというバックグラウンドがあります。
24歳の時、私は看護師の仕事を休職して治療のために大きな手術をし、手術後は数年ほど杖をつくなど、上手く歩くことができない時期が続きました。自分の中身が変わっていないのに、歩き方が変わっただけで、周囲の人から大きく境界線を引かれたような感覚があり、看護師として働くことについても、「この状態では働けないよね」などと言われたりして、ネガティブに捉えるようになっていました。リハビリの甲斐あって、今ではほとんど分からない程度まで回復したのですが、あの「境界線を引かれたような感覚」は消えずに残っており、中途障害を持った夫は、この感覚をいつも受け止めているのではないか、ということも考えるようになりました。昨今ではDE&Iや両立支援といったことが盛んに言われていますが、将来、自分の娘にも手術が必要になった時も、私と同じ思いをすることなく、自分の可能性を諦めることがない未来を創りたい、と思うようになったのです。これが1つめの軸になります。


―大変な経験をなさったのですね。今も看護師を続けていらっしゃるのですか?

湯浅:いえ、その後7年間看護師として働きましたが、現在は産業保健師として働いています。もう1つの軸は企業で働くようになって出会った組織開発です。企業内の保健師として、従業員に対して仕事と治療の両立支援などを行ううち、気づいたのが、アンコンシャスバイアスの存在です。
私自身も不妊治療を続けながら仕事をしていたので、配慮という形で機会が与えられない、ということも経験しましたが、同時に、自分自身が従業員に対してそうしたことをしていたかもしれない、と気づかされることもありました。そんな時に、職場と対話を重ねることで、両立支援が上手くいった事例があり、組織開発というものの可能性を感じるようになりました。
私の中でDE&Iという軸と組織開発という軸が重なりあったタイミングで、これまで自分が手探りでやってきたことは正解だったのか、一度しっかりと学びたい、と思うようになり、LDCの受験を決意しました。


―お二人とも、それぞれキャリアを築く中で、「学びたい」という強い思いを抱くようになり、そこに妊活や出産といったライフステージの変化が重なったことで、社会人大学院で学ぶことを決意なさっています。これはもしかしたらライフステージが変化しやすい女性ならではの人生の選択なのかもしれません。




◇子育てと大学院の両立は家族の理解と協力が不可欠


―子育てと大学院の勉強との両立は容易なことではないと想像しますが、なんとかなるものですか?

佐久間:大変ですが、やりようはある、と思います。私の場合、産後1カ月のタイミングで、2年次に1年間かけて取り組むリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(LFP)を開始し、クライアントさんと週に一度の定例ミーティングが始まりました。ですので、今年はもう「育児とLFPだけができればOK」というスタンスで取り組んでいます。まだ修了できるかどうかは分かりませんが(笑)。


―オンラインとはいえ、産後1カ月から、というのはかなりハードですね。ちなみに、1年次はほぼ妊娠期間だったわけですが、体調など大丈夫でしたか?

佐久間:オンラインだったので問題なかったです。コロナ禍明けで対面授業も少しずつ増えてきたタイミングではあったのですが、私は全てオンラインで受講させていただきました。体調が優れない時は、その都度お伝えして、画面オフにさせていただいたりしていました。幸い出産は授業の無い2月だったので、お休みすることもなかったです。


―湯浅さんも小さなお子さん2人を育てながら大学院で学ぶというのは、なかなか大変だとは思いますが、なんとかなっていますか?

湯浅:そうですね。やろうと思えばできます!というのが答えで、あとは家族が承諾し協力してくれるかどうか、そして、やり方をどう工夫してやるかと、自分の生活とどう折り合いをつけていくか、という話だと思います。
とはいえ、最初にイメージしていた通りの学びができているかというと、それはできていないというのが正直なところです。なにか課題をやるにしても、先行研究に洗いざらい目を通してから取り組み、予習や復習もしっかりやって…などと思い描いていたのですが、全くそんなことはできておらず、実際はその日その日をどう乗り越えていくか、みたいな感じで…。


―やはり限られた時間の中でやりくりするためには、あきらめなくてはならない部分もあるということでしょうか。それでも、4月から半年学んできて、なにか手ごたえのようなものはありましたか?

湯浅:それは多いにあります。実はこれまで、実務者として人に頼ったり、人にお願いしたりすることに苦手意識がありました。それが、LDC1年次のグループワークで、メンバーから多くのフィードバックを受け、人に任せたり、人が快く動いてもらえるよう配慮したりすることが、マネジメントという視点ではとても重要である、ということに気づき、視座がぐっと上がる感覚があったのです。この経験はきっと実務に生きてくるに違いない、と感じています。


―それはよかったです。ご家族や職場にはどんな形で協力をお願いしているのですか?

湯浅:家族には「私はこの2年間、大学院で勉強がしたいので、協力お願いします」といったことを伝え、金曜と土曜は基本的に夫に見てもらうようにしています。あとは、両方のおじいちゃんおばあちゃんを総動員して、今日はあっち、明日はこっちという具合に預かってもらっていますね。職場の方も応援してくれていて、コロナが5類になって以降、出社率が高まっているにもかかわらず、私の大学院進学と子ども2人を育てている、という状況を考慮して出社率を下げてもらっています。


―佐久間さんはこの春から子育て生活が始まったということになるかと思いますが、いかがですか?

佐久間:はい。我が家も家族総動員ですね。うちの子は今年保育園に入ることができなかったため、家族には予め相談しておき、今は夫と両方の両親とおばと妹と…まさに総動員で手伝ってもらいながら、やりくりしています。結構、ポイントだと思っているのは、特定の誰かに負荷をかけすぎない、ということです。
頼みやすいからと、母一人に丸投げ、といった形にすると、母だけに負荷がかかってしまい、かわいいものもかわいいと思えなくなってしまうことがあると思うので、かわいいと思える範囲で収まるよう、全員に分散することを心掛けました。私の場合は家族や親戚の協力が得られましたが、それが無ければ、保育ママさんなど、社会資源も含めて広げていくつもりでいました。


―ご家族の協力は不可欠かとは思いますが、家でオンライン授業を受けていると、「ママがいい~」と子どもがぐずる…なんてことはないですか?

佐久間:それはありますね。抱っこしたり、画面オフにして寝かせつけしながら受講したり…生生しい話、授乳しながら受けたりも…(笑)。そのあたりは事前にお伝えしていましたし、みなさんにもご理解いただけていたように思います。


―湯浅さんは、オンライン授業だけでなく、池袋キャンパスでの対面授業にも参加されていますよね。

湯浅:はい。あまり知られていないのですが、土曜日の対面授業に参加する際は、事前に申し込んでおくとキャンパス内にある保育施設を格安で利用することができるんです。私は下の子を連れてきて半日利用したのですが、シッターさんが来てくれて、子どもも機嫌よく過ごしていたようです。対面授業の際も、希望すればオンラインで受講できますが、できればキャンパスで授業を受けたかったしみなさんにも会いたかったので、利用できてありがたかったです。




◇やりたいこと、やるべきことは事前に洗い出しておく


―産後しばらくは、体調も本調子ではなく、睡眠時間も削られます。LDCとの両立は体力的にも大変だったのではないですか?

佐久間:そうですね、日中は主に家事、育児をやって、夜中に課題やクライアントワークを進める、といった形でやっていたので、どうしても睡眠時間は削られましたが、その分日中に子どもとお昼寝したりしてしのいでいました。


湯浅:私は逆に、朝方でやっています。グループワークなどが無ければ、夜は21時過ぎに寝てしまって4時に起き、子どもたちが起きる6時か6時半ごろまで1時間、2時間とか時間を決めてそこだけで集中して勉強する、といった感じです。もっと時間があればあの論文もこの論文も読めるのに…とは思いますが、時間も限られているので、「今できることをやっている」という感じです。


佐久間:私も「今できることをやっている」というところは一緒です。あれもこれもは無理ですので、やりたいこと、やるべきことは事前に整理して洗い出しておくようにしました。今年のテーマはとにかく、LFPと育児ですので、出産前にスプレッドシートにやるべきことを洗い出してスケジュールに落とし込んでおき、「今月はサーベイのデータ分析とお食い初めだ」といった形に整理して、大事なこと、やるべきことを絞り込み、見える化して取り組むようにしていました。


―「データ分析とお食い初め」というのは大学院生ママという感じですね(笑)。
 なるほど、子育てと大学院の勉強との両立は決して簡単なことではないけれど、お二人とも周囲の人たちの協力とご自身の工夫と努力で乗り切っていらっしゃる、ということがよく分かりました。同期の方々との関わりなどはいかがですか?受け入れられるか不安なところもあったかとは思うのですが。

湯浅:入学当初は子どもが5、6カ月というタイミングでしたので、夜の寝かしつけなどもあり、授業はともかく、連日夜にグループワークをするというのは厳しい状況でした。そこで、思い切ってメンバーにグループワークの時間を朝にしてほしいと相談してみたら、快諾してもらい、朝の6時から8時にグループワークをすることになりました。ウェルカムな雰囲気でみなさんが受け入れてくださったのがすごく嬉しかったですね。


佐久間:私の場合は1年次の終わりに出産したので、出産後、2年次がどうなるかが、ものすごく心配でした。同期との間に距離ができてしまうのも怖かったですし、体調が戻るかどうかも分からず、最悪の場合は休学も視野に入れて考えていました。
そんな時、あるメンバーの発案で、「デイリーリフレクション」という日々感じることを任意でSLACKに投稿していく試みが始まりました。他の同期が仕事のことを投稿している中、私は少し引け目を感じながら、育児での出来事や日々感じていることを投稿し続けたところ、みんな違和感なく受け入れてくれ、それどころか「面白い」「楽しみにしている」と喜んでくれました。育児の悩みについて投稿した時なども、同期から温かい言葉・アドバイスが返ってきて、そのおかげで一番大変な時期を乗り越えられたような気がしています。


―LDCならではの、心温まるエピソードです。




◇「自分が中途半端では、誰も幸せにならない」


―お二人とも周囲の協力を得つつ、ご自身の工夫と努力で乗り切っていらしたということが分かりましたが、振り返ってみて「あの時は正直つらかったな」と思い出すのはどんな時ですか?

湯浅:やはりグループワークの発表前などは、どうしても余裕が無くなります。「構ってくれ、遊んでくれ」と叫ぶ子どもたちをなんとかなだめ押さえこみながら課題をやることになってしまったので、そうした時は、罪悪感いっぱいで苦しかったです。


―罪悪感を持つ必要はないと分かっていても、罪悪感を持ってしまうものですよね。どんな風に解消していましたか?

湯浅:日曜日は家族と一緒に過ごす時間と決め、課題などはせず、子どもたちと過ごすようにしました。また、上の子は4歳で、話せば私の状況も理解してくれるようになってきたので、「今日は勉強があるし、夜もグループワークでお友だちと勉強するから一緒にいられない時間があるよ。その代わり明日は行きたいところに遊びに行こうね」などと予め伝えておくようにしていました。


―佐久間さんが一番大変だったことはなんですか?

佐久間:一番大変だったのは、自分の時間を手に入れるために必ず他人の力を借りなければならないことでした。もちろん、授業など、予め決まっていることについてはお願いできるのですが、授業以外にも、LFPを進めていくためには、インタビューを行ったり、サーベイの分析をしたり、介入施策を一から企画立案したりと、イレギュラーに時間がかかってしまうようなことも多々あります。どこまでやるかは自分次第ではあるのですが、誰にどこまでお願いしてどの程度時間をもらうか、というところは常に葛藤があります。


―LFPは自分一人で進めるプロジェクトですので、やろうと思えばいくらでもできてしまうわけで、どこまでやるか、というところは悩ましいところでもありますね。

佐久間:その点については、ヒントとなるできごとがありました。産後1か月ほどのタイミングで、LDC一期生の堀江敦子さんから仕事と育児の両立をテーマとしたセミナーのご案内をいただいたのです。私はそのセミナーに赤ちゃんを抱っこしたまま参加したのですが、子どもが泣いて集中できず、結果的にすごく中途半端になってしまいました。
その時に、「自分だけで中途半端に引き受けると、誰も幸せにならない」ということを強く実感しました。自分にとって必要だと思うものがそこにあるのなら、家族に子どものことをちゃんと任せきることが大切だということに気づいたのです。その気づきはずっと心に残っていて、山が来て苦しい時も、自分がやりたいのなら、周囲に多少負担をかけるとしても、「私はやりたい」という気持ちも含めてしっかりお願いしていくことができるようになりました。


―素晴らしい気づきですね。それはマネジメントに置き換えて考えてみても、とても大切な気づきのように思います。

佐久間:そうですよね。湯浅さんと同様、私も育児との両立の中で自分自身、内面的な部分も含めて大きく成長できた、という気がしています。




◇学びも育児も孤独にならず、歩み続けて


―最後に、お二人のように子育て中だけれども、LDCに挑戦したい、と考えている方に向けてメッセージをお願いします。

湯浅:私は、自分さえ覚悟を決めたら、あとは必然的にベクトルがその方向へ向かっていくものなのではないか、と思っています。ですので、本当にやりたいという気持ちがあるのなら、やらない理由づけをしているよりは、覚悟を持ってやると決めて一歩前に踏み出してみてほしいです。育児中に大学院に行くことに対して、応援してくれる人は想像以上に多いですし、同じような思いを持っている人も想像以上に多いので、その意味でも孤独ではなく、きっと仲間が見つかります。


佐久間:中原先生はよく「学びは孤独になるな」とおっしゃるのですが、学びも育児も孤独にならないことが大事だと思っています。「学びたい」という想いと他者の力を借りる勇気があれば、ぜひ一歩踏み出してみて下さい。
私が大事にしている言葉の一つに、Keep Walkingというものがあります。走るでもなく立ち止まるでもなく、歩き続ける。女性のキャリアは、妊活・出産・育児…とライフステージの変化によって、走れ続けられないことにもどかしさを感じたり、つい立ち止まりそうになってしまう瞬間があると思うのですが、ゆっくりと一歩一歩でいいので、歩みを止めない、ということが大事だと思っています。LDCは歩み続けるための選択肢の一つになりうると考えているので、ご自身のキャリアを考える上で、LDCで学ぶことが「自分らしく歩める」と思えることなのであれば、迷うことなく一歩を踏み出していただきたいです。