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  • 2023.06.07
  • 修了生の声
  • 修了生インタビュー「大企業も中小企業も変わらない。純粋にそこにある『人と組織』を見る目を養うことができた」

LDC二期修了生 薗田直子さん(株式会社リンクス人事コンサルティング 代表取締役 社会保険労務士)

 
2023年3月に修了された薗田 直子さんにLDCで学んだ2年間の大学院生活を振り返っていただきました。

 
―ご修了おめでとうございます。薗田さんは長らく社会保険労務士をなさってきたとのことですが、なぜ人材開発、組織開発を勉強しようと思われたのですか?

薗田さん(以下敬称略): 2001年に社労士となり、主に群馬県内の中小企業の人事労務面全般を継続的に支援するお仕事をしてきました。クライアント先の企業は主に50名~300名ほどの規模なので、人事専門の部署が無いところがほとんどです。経営者は常に目の前の業務に追われ、人材開発に時間を割く余裕もなければ、人や組織に関わる部分を任せられる専門の人材を雇用する余裕もありません。私は、そうした経営者の方々に寄り添いながら経営を支えていく社労士という仕事に、大きなやりがいを感じてやってきました。その一方で、常にある「もどかしさ」も感じていました。

 
―どんな「もどかしさ」があったのですか?

薗田:私は人事の制度や仕組みをつくるお手伝いをすることも多かったのですが、現場で機能しないことも多く、常にもどかしい思いを抱えていました。「制度や仕組みだけ整えても職場は変わらない。どうしたらいいのだろう」と模索しているなかで、中原淳先生が担当なさっている慶應MCCのラーニングイノベーション論のことを知り、通い始めたのが今から6年ほど前のことです。そこで初めて「組織開発」という概念に出会い、「私が探し求めていたのはまさにこれだ!」と気づきました。そこから少しずつ組織開発について学び始め、職場環境づくりの支援にも組織開発の視点を取り入れるようになりました。

 
―LDCに入学されたのはどういった経緯だったのですか?

薗田:慶應MCCの講座を修了した後、セミナー登壇をお願いするために中原先生の研究室へお邪魔した際、先生から社会人大学院ができる、とお聞きしました。「大学院に入って組織開発についてもっと学びたい」と思いましたが、私は群馬県在住なので、さすがに毎週は通えないと諦めていました。ところが、コロナ禍でオンライン開講となり、「これはまたとないチャンスだ!受けなかったら後悔する!」と思って申し込みました。

 
―実際に入学してみていかがでしたか?

薗田:正直、最初の半年、いえ10カ月位は、ずっとつらかったです。というのも、LDCの中で語られている世界というのは、経営学であったり、大企業であったり、どの話も私のいる中小企業の現場で起きている問題や、経営者のお悩みとは結び付かないものばかりだったからです。同級生たちの大企業や外資系企業での取り組みの話などを耳にする度に格差を感じ、どうやっても大学院の授業の世界と日常のリアルの世界が結びつけられない日々が続きました。以前から大企業と中小企業、都市部と地方の学びの格差をすごく感じていて、なにかそれをつなぐお手伝いをしたい、などと考えてもいたのですが、私自身がつながらなくて…。同期の方々はみなさんとてもいい方ばかりでしたので、グループワークなどで話ができない、といったことは無かったのですが、話を聞く度に学びの差や経験格差のようなものを感じ、自分の中で常にもどかしさや歯がゆさがありました。

 
―いつも明るく見える薗田さんですが、LDC1年次はつらい日々を送っていらしたのですね。それが変わってきたのはいつ頃でしたか?

薗田:2年次になってリーダーシップ・ファイナル・プロジェクト(以下、LFP)が始まり、再び自分の現場に向き合うようになってからかもしれません。自分自身が地べたに立って、そこにある「人と組織」を眺めたときに、どんな組織も人が集まりチームができて組織になっていく、そのプロセスは大企業も中小企業も変わらないんだな、ということに気づいたのです。もしかしたら、自分の方にこそ「大企業と中小企業は違う」と変なバイアスがかかっていたのかもしれません。1年間、自分の足でアカデミックと現場、大学院と日常とを往還したからこそ、そうしたバイアスが外れ、純粋にそこにある「人と組織」を見ることができるようになったように思います。中原先生が「大学院は浸み込む学びだ」とおっしゃっていますが、まさにそれを体感することができました。

 
―印象に残っている授業などはありますか?

薗田:やはり1年次春のリーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト(以下、LWP)と秋の人材開発・組織開発論Ⅱ(以下、HRDOD2)ですね。春のLWPでは、自分のリアルな世界とつながらない…というもどかしさを感じつつも、時間が無い中で背景の異なる人たちとの間にある景色や言葉の違いを握るために試行錯誤したことが印象に残っています。また、そのプロセスを、じっくりと時間をかけて振り返ったのは、貴重な体験でした。自分自身と向き合い振り返るのは痛いものがありましたが、仲間からのフィードバックは温かく、LDCならではの学びでしたね。秋のHRDOD2では、LWPでの学びを活かして、ミーティングの度に振り返りを行ったり、フィードバックを取り入れたりすることで、生産性がぐっと高まったことを実感しました。さらに2年次のチームワーク論では、チームプロセスについて、アカデミックに学ぶことができたので、「なるほど、チームで起きていたのは、そういうことだったのか」と、答え合わせをしながら理論を体感的に学ぶことができました。理論と実践が紐づき、しっかりと腑に落ちる、LDCのカリキュラムはよくできてるなーと思いました(笑)

 
―お仕事との両立はいかがでしたか?

薗田:私の仕事はコロナ禍でもほぼ全てリアルでしたので、時間のやりくりは大変でしたね。ただ、自分自身の働き方を見直すいい機会になりました。自営でやっていますので、以前は平日も遅くまで仕事したり、土日に資料作りをしたりしていたのですが、自分のやるべき仕事の優先順位をつけて、平日の夜と土日にLDCのための時間を確保するようにしていました。

 
―LFPでは、どんなことをなさったのですか?

薗田:事業承継後の組織づくり、リーダーづくりをテーマとしたプロジェクトに取り組みました。クライアントは地元の中小企業ですが、これまでお付き合いの無かった企業です。社長さんからは、「将来は会社のコアメンバーの中から後継者を選び、事業承継をしたいと考えている。彼らのリーダーシップ開発をしてほしい」というオーダーをいただきました。そこで、コアメンバーたちに組織開発プロジェクトのリーダーとなってもらうことで、社内の組織開発を進めるとともに、会社のコアメンバーに対するリーダーシップ開発を行い、そのコアメンバーたちにどのような変容があったのかを評価し、記述しました。

 
―やってみていかがでしたか?なにか変化はありましたか?

薗田:プロジェクトの最後の打合せの中で、コアメンバーのマネジャーたちが「今回のプロジェクトはものすごく大変だったけれど、本当にやってよかった。こんなに真剣に組織と向き合い、会社のことを考えたのは初めてだった」と感想を述べていたのが印象的でした。当初、社長さんは「将来はコアメンバーに事業承継したい」という思いは持っていたものの、確信を持てず、それを誰にも伝えていなかったのですが、その場で社長が、コアメンバーのリーダー格の社員に向けて初めて「次はお前だと思っているから、そうした気持ちでやってくれ」と声をかけるという一幕もあり、お手伝いして良かったと感じました。その会社さんとは今も、引き続きお仕事が続いています。

 
―LDCの2年間で何が得られたと感じていますか?

薗田:たくさんあります!これまで現場の肌感だけでやっていたことが多かったのですが、LDCで多くの理論、源流にあたり、アカデミックな物差しを得て、それを現場の肌感とを照らし合わせることで人や組織を見るときの解像度がぐんと上がったと感じています。課題解決についても、多くを学ぶことができました。中小企業はリソースがないこともあり、これまでは経営者の思う課題と私が思う課題をすり合わせ、できることから課題解決していくような形でやっていました。ですが、LDCで学ぶ中で、目先の課題、現場の課題だけでなく、経営にインパクトを与えるために、より優先度の高い課題はなにかを構造的に考えられるようになってきました。あと、優秀なクラスメートたちと一緒に仕事をすることで得たものは大きかったですね。アイデアをストーリー立てたプレゼン資料にするところ、ロジックを立てるところ、アジェンダをしっかり用意し、タイムマネジメントもきっちりして1時間のオンラインミーティングで実りある成果を出すところ…など、他の人と働くこと、越境チームで協業することでの学びはものすごく大きかったです。

 
―今後のお仕事にどう生かしたいと考えていらっしゃいますか?

薗田:まずは、自分のクライアントにしっかりと価値をお届けしていきたい、ということがあります。もうひとつは、自分の中で地方、中小企業の学びあいの場をつくりたい、という思いがあります。地方の中小企業では、そもそも人事部がなく、総務人事を一人が担当しているケースも多くあります。そうした方々は、経営者にも近くて「会社を良くしたい」という思いもあるのですが、立場的に社内で孤独になっている方が多いのです。ですので、総務人事の方々が地域で繋がりをもち、学び合える場をつくりたいのです。これまでも、群馬県の事業を受託して研修などをやってきたのですが、昨年は人事担当者が学び合う場づくりを提案し、採択されました。今後は、こうした学び合いの場を持続してつくっていきたいと思っています。

 
―最後にLDC入学を検討されている方にメッセージをお願いします。

薗田:単に人材開発・組織開発を学ぶというだけでなく、どんな立場の人にとっても得られるものは大きいと思います。自分自身の人材開発の場でもあり、自分自身の可能性、人と関わることへの希望を感じることができた2年間でした。授業だけでなく、現役のコンサルタントや人事の方々との協業からも学ぶことができ、想像以上のものを得ることができたように思います。自分に閉じないこと、自分の興味を広げていくことで、次々とドアは開いていきます。地方にいても、オンラインの扉があるから大丈夫。LDCは無限の扉の入り口。どこからでも受講できますので、ぜひ飛び込んでいただきたいです。