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  • 2023.04.20
  • 授業
  • 人材開発・組織開発に不可欠な実践知を学ぶ 特別講義「グループ・プロセスへの働きかけ(介入)入門」

リーダーシップ開発コースには、単位科目とはなっていないものの、初年度から毎年行われている特別講義があります。組織開発実践者である組織クオリティ・デザイン・ラボの松本加奈子さんによる「グループ・プロセスへの働きかけ(介入)入門編―ユースオブセルフを高める」です。2020年度、2021年度はオンラインで行われていましたが、2023年度は3月4日(土)から6日(月)までの3日間、初めて対面授業で開催されました。講義には2年次の10名の他、事務局の鹿島さんと井上さんもLDC生と共に受講。中原淳先生も3日間オブザーバーとして参加しました。
 

 
この特別講義の目的は「クライアントシステムの発達を協働的に支援するプロセス・コンサルテーションにおける、スモールグループを対象とした『今-ここ』でのミクロな働きかけと、自己のプロセス(内的経験)にアクセスすることを通じて、OD実践者のあり方(ユース・オブ・セルフ)の意識を高める」というもの。「いったい何のことだろう?」と思われた方も少なくないかと思いますが、人材開発・組織開発コンサルタントとして不可欠な、人や組織に対して効果的に介入、働きかけを行う「プロセス・コンサルテーション」の基礎を学ぶ入門講座です。
 

 
人材開発・組織開発を実践していくうえでは、経営理論やデータ分析などについても精通している必要があり、LDCではそのための授業も数多く用意されています。しかし、人材開発・組織開発とは、生身の人を扱う仕事です。理論やデータに基づいた計画的な取り組みも大事ですが、それだけではクライアントの真の課題解決に到達できません。人々が望ましい方向へ変化するためには、関係性の中にある見えにくい何かに気づくことが必要な時があります。組織開発実践者は、その見えにくいことに光をあて、「気づき」が生まれるように、人々に働きかけます。それは人々がコミュニケーションをとっている、まさにその場で(「今ここ」と表現する)おこなっていくのです。組織開発の中長期の計画的な取り組みを「マクロな働きかけ」とすると、これは「ミクロな働きかけ」と呼ばれています。「マクロな働きかけ」を計画・実践するためには、組織開発実践者には「科学知」が求めれます。一方、「ミクロな働きかけ」は計画ができない創発的なものであるため、「臨床知」が必要となり、組織開発実践者自身を活用していくこと(ユース・オブ・セルフ)が求められます。この3日間の特別講義は、少人数のスモールグループに対して、「今ここ」でグループ内に起こっていること(プロセス)を観察しながら、「気づき」を得てミクロな働きかけをおこなうことを通じて、プロセス・コンサルテーションの実践者としての知識・スキルというよりは「あり方」を体験を通じて学ぶ、LDCのためだけに開発された独自のコンテンツとなっています。
 

 
グループ内の「今-ここ」のプロセスに働きかけるためには、その場にいる「自分の存在」を無視することはできません。「グループ・プロセス・コンサルテーション」では、自らの観察、価値観、感情などに基づいて動くことで自己を活用する=ユースオブセルフ(Use of Self)が求められるのです。そして、「ユースオブセルフ」のためには、表面上交わされる言葉だけでなく、感情や価値観など、グループの、そして自己のプロセス両方に気づく必要があります。受講生の皆さんは3日間を通じて、まさにそのプロセスを今まで以上に気づく体験を通じ、学びを深めます。

受講生の学びを促進するために、立教大学池袋キャンパス、6号館の1室に用意されていたのは、事務局が苦心して設置した「360度ZOOM録画・車座サークルシステム」です。授業では、車座になって対話を行う受講生の様子を3日間録画。受講生に共有され、自分はどのように対話に参加しているのか、話し合いの流れがどのようなものだったのか、働きかけはどこで、どのようにおこなうことができるのかを、振り返ることができるのです。
 

 
3日間の最後に、中原先生は「みなさん、お疲れ様でした。一人欠けてもこの場はできなかったと思います。一人ひとりがぎゅっとまとめられ、“おにぎり”にされるのが実社会です。みなさんは今日のように一人ひとりを大事にする場をつくって行ってほしいと思います」と、受講生を労いました。
 

 
講義後、松本さんにプロセス・コンサルテーションを行ううえで心掛けるべきことをうかがいました。「まずは、クライアントシステムをよく観察し、言語化されていないことなどを感じ取ることです。一方で、自分がその場において異質なものであることを恐れず自分らしくいることが、ライアントシステムの視点や可能性を広げることを信じることが重要です。そして、 クライアントシステムのために、勇気を出して伝えることです。コンサルタントは、クライアントから抵抗を受けることもしばしばあります。それでも、『クライアント自身は、誠実にその場にいる」ということを信じ、『自分はなにがあってもここにいる』という覚悟を持って臨むことです。決してうまくいくことばかりではありませんが、全力で最善を尽くすと腹に決めれば、きっとなにかをなすことができるのではないかと思っています。私もこの3日間をみなさんと過ごして勇気づけられました。一緒にがんばっていきましょう」と受講生たちにエールを送りました。
 

 
LDC1年次の学びはこの授業が最後。4月からは大学院での学修の集大成となるリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトが始動し、チームではなく、一人で本格的なクライアントワークに取り組みます。