2022年6月17日(金)18時30分~21時55分、人材開発・組織開発実践論のオンライン授業が行われました。人材開発・組織開発実践論は、組織開発の取り組みにおいて、効果的な介入を行うために必要となる実践的なマインドやスキル、知識を習得することを目的としています。担当は組織開発・人材開発がご専門で、現場での豊富な実践経験をお持ちの齊藤光弘先生です。
第9・10回目となるこの日の授業では、具体的な介入手法について学ぶことを目的として、授業内で組織開発において多く活用されている「ワールドカフェ」「OST(オープンスペーステクノロジー)」という二つの手法を使ったワークショップ演習が行われました。実際に受講生が4つのチームに分かれ、それぞれワークショップを企画、ファシリテーションすることで、手法についての理解を深めるだけでなく、ワークの設計や、ファシリテーション時に気をつけるべきポイントなどを体験から学び、それぞれの組織開発の現場実践の際に活かせるようになることをめざします。
はじめに齊藤先生から進め方の注意や、概要説明があった後、まずは「はじめの一言!」として「過去に参加したことのある対話型ワークについて、気づきや学びが大きかったもの、逆に非常に少なかったもの」についてグループで話し合います。
対話の準備が整ったところで、18時45分からは1つめの「ワールドカフェ」チームの発表です。「ワールドカフェ」とは、カフェのようなリラックスした雰囲気で、メンバーの組み合わせを変えながら何度も話し合いを行う手法です。4,5人単位の小グループで話し合いを行っていくことで、あたかも参加者全員が話しあっているような効果を得ることができます。
ワールドカフェの概要や実施方法、注意点などについての説明があった後は、今回のワールドカフェのテーマとなる「問い」が発表されました。
問いは
1.今のLDCはあなたにとってどんなコミュニティですか
2.わたしたちにとって、未来のLDCがどんなコミュニティであってほしいですか?
というもの。LDC修了後のコミュニティづくりについて、今から対話を通して考えていこう、というわけです。
ワールドカフェを始めるにあたり、まずはLDCの立ち上げ時から事務局を務めている加藤走さんをゲストとして迎えてインタビュー。LDC立ち上げ時の話や、LDCへの想いについて話を聞きました。
19時過ぎからは、いよいよ「ワールドカフェ」のワークショップです。ブレイクアウトルームで数名ずつのグループになり、メンバーを変えながら15分の対話を3回行います。2回目、3回目の話し合いでは、前回、各ルームで行われた対話内容をシェアし、他のルームでどんな話がされていたのかを共有したうえで進めていくのがワールドカフェの特徴です。なお、通常のワールドカフェでは、テーブルに敷かれた模造紙に対話の内容をメモにして残したりするのですが、オンラインということで、グーグルスプレッドシートが模造紙代わりに用意されていました。
ワールドカフェが始まると、気心の知れたLDC生同士ということもあり、どのルームでも活発な対話がされていました。「LDCはどのようなコミュニティか」という問いには、「LDCは、安心感のあるサードプレイスという感じ」「フィードバックをたくさん受ける経験ができて、とても刺激的」「仕事の話が安心してできる場」「みんな優秀だし、積極的でヤル気が違う」などといった意見が出ていました。
「未来のLDCをどんなコミュニティにしたいか」という問いに対しては、「現場で自身が実践をしていくためのパワーと知識を養うために戻ってくる場」「この中で閉じるのではなく、外を巻き込み、仲間を増やしたい」「現場とアカデミックの場の往還を外部の人を巻き込んでやっていきたい」などといった意見が交わされていました。
最後の全体セッションでは、未来のLDCのコミュニティについて、「人と組織づくりの最先端という意味で、世界の知恵が集まる場所になるといい」といった話がされ、最後は「修了後のLDCラーニングコミュニティについて、これからも継続的に議論していきたい」という意見でまとまりました。
休憩の後、20時15分からは「OST(オープンスペーステクノロジー)」チームによるワークショップです。OSTとはテーマも進め方も、参加者が自主的に決めて進行する話し合いの手法です。個人の自主性やリーダーシップ、自発的なチームとしての協働能力を最大限に引き出せるという特徴があります。
OSTは下記の5ステップで進められます。
① オープニング
② テーマ出し
③ マーケットプレイス
④ 分科会
⑤ クロージング
今回の議題は「修了後もLDCのつながりを最大限活かしていくには」というもの。今から修了後のことをイメージし、どう実行に移していくか考える機会をつくることが目的です。
「オープニング」で、進め方や議題について確認したところで、まずは話し合いの「テーマ出し」です。今回の議題に沿ったもので話し合いたいテーマを思いつくまま、その理由と共に発言していきます。出されたテーマはZOOMのチャット欄に書き込まれます。
ある程度出揃ったところで、次は「マーケットプレイス」です。ここで、テーマの提案者は、テーマについて吟味し、似たようなものはまとめるなどテーマを絞り込みます。掲げられたテーマは「LDCバーを実現したい」「先生方とのつながりをもう少し深めたい」「在学生同士のつながりをより強固にするには」「学び以外のLDC部活を考えたい」「修了後に共著で本をつくりたい」など。その後、参加者それぞれは自分が参加したい話し合いのテーマのブレイクアウトルームに移動します。
テーマ毎のブレイクアウトルームが割り振られ、「分科会」がスタート。それぞれが気になるテーマのブレイクアウトルームに入室します。ルーム内には各テーマの提案者がいますが、それ以外の人は他のルームと自由に行き来することができます。
分科会ではそれぞれのルームで和やかに話し合いがされていました。中には訪れる人が少なく、途中で閉鎖してしまった分科会もありましたが、その場合も別のルームへと気軽に移ることができるのは自主性が重んじられるOSTの良さです。
21時20分。あっというクロージングの時間となり、各ルームで話し合われた内容をシェアします。「どこかのバーと提携してLDCバーをやってみたいですね、といった話になり、お店を探しに行く日程を決めました」「卒業旅行に行きたい、といった話の他、卓球などのスポーツや音楽鑑賞、国内旅行など様々なアイディアが出ました」「共著で本をつくるなら?ということで事例集、実践集、組織開発の本など様々なアイディアが出ました」など、短い時間の中でも、かなり充実した話し合いができていたようです。
最後は、齊藤先生からのフィードバックです。
「短い時間でのオンラインとなりましたが、どのテーマも興味深く、流れもよく、楽しんで話し合いができていたと思います。ワールドカフェでは、最初に対話の呼び水としてゲストへのインタビューが入っていたのがとても良かったです。話し合いを段階的に深めていくためには、3回のセッションのうち、2回目と3回目で問いを変えても良かったかもしれません。OSTでは、どんどんアイディアが出て、書ききれないほどのテーマが出てくる面白さを感じられた一方で、ルームに1人きりになったりするOSTならではの気持ち悪さを感じた方もいたかと思います。OSTは自分たちで主体的に組織を作りあげていくという“自己組織化”という概念が背景にあります。今回、人が集まらずクローズされた部屋があったということも、決して失敗ではなく、テーマについて今、このメンバーで、話すタイミングではなかったというだけのことです」など、対話型の場づくりについてのポイントを押さえたフィードバックが返されました。
齊藤先生は人材開発・組織開発実践論のねらいについて次のように話します。「この授業では、組織開発・人材開発を実践していく際に効果的な介入を進められるよう、必要な知識、スキルやマインドセットを学んでいただきます。学んだことを現場やリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトにすぐに実践できる、ということが重要だと考えていますので、より現場感のあるノウハウやTIPSなどもお伝えできればと思っています。組織開発は、関係性や組織文化など、意識するべき観点が多く、掘り下げていくと奥深い世界なので、どこまでお伝えしたらいいのか悩むところなのですが、あまり難しく考えすぎず、まずは介入のリスクが大きくなり過ぎない深さや範囲で、実践してもらうということも大事なのかなと考えているところです。今回のワールドカフェやOSTはフレームに沿って行えますし、テーマも気軽に話し合えるものだったので、楽しんでもらえたのではないかと思います。楽しかったという体感が残れば、必要になったときに思い出すことができます。この授業での経験が、少しでも受講生のみなさんが実践するうえでの自信につながっていくことを願っています。」
実践からの学びはまだまだ続きます。