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  • 2022.06.16
  • 授業
  • リーダーシップ開発の理論と実践を学ぶ 「リーダーシップ教育論」

5月28日(土)、LDC一年次「リーダーシップ教育論」の授業が立教大学池袋キャンパスで行われました。「リーダーシップ教育論」はリーダーシップ教育の理論的背景を理解し、リーダーシップ教育プログラム開発の手法を学ぶ授業です。担当はリーダーシップ教育がご専門の立教大学経営学部准教授、舘野 泰一先生。当日は在学生17名が集まり、1人がオンラインで参加しました。

 

 
授業は定期的に配信される動画を観て学び、課題を提出する、というオンデマンド形式で進められてきましたが、第7回となる今回は、池袋キャンパスに集ってのリアルタイムセッション。立教大学経営学部で行われている「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」の活動を参観し、リーダーシップ開発の現場を体感することが目的です。

 

ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)とは、アクティブラーニング型でリーダーシップを学ぶ立教大学経営学部のコアカリキュラムです。2006年に創設され、経営学部生約400名が学んでいます。BLPの特徴は「リーダーシップは学習可能で全員が発揮することができる」という価値観のもと、一部のリーダーを育成するのではなく、全員が自分らしさを活かしたリーダーシップを経験的に学ぶカリキュラムになっているところです。経営学部生は1年次から3,4年次にかけてクライアント企業の課題解決を行うプロジェクト型学習(Project Based Learning)とスキル・理論習得を交互に体験しながら自分ならではのリーダーシップを身につけていきます。

 

この日は、2年次(BL2)のプロジェクト型学習の中間発表を行うポスターセッションが行われました。クライアント企業はパーソルホールディングスで、テーマとなるビジネス課題は「『20代社会人がはたらく上で感じている課題』を1つ取り上げ、パーソルグループが取り組むべき新サービスを提案せよ」というもの。4月から約280名60チームの大学生たちが20代社会人へとヒヤリングを行い、この課題に取り組んできました。今回のポスターセッションの目的は、各チームが着目した課題とその課題解決のために考えられる新サービスの方向性を発表し、多様な視点からフィードバックを得て、質を高めていくことです。そのため、LDCの在学生だけでなく、クライアント企業の方々や卒業生、外部からの見学者も多数参加しています。

 

13時、LDC生や卒業生、外部見学者40名ほどがA203教室に集まり、まずは経営学部長の山口和範先生のご挨拶から。続いてガイダンスが始まり、BLPの主査でもある舘野先生からBLPの紹介がありました。BLPの運営に関わっているのは、教職員とSA(Student Assistant)、CA(Course Assistant)他、様々な役割を持った学生スタッフたちです。これらの学生スタッフは、学生たちの憧れの的で、毎年、希望者が殺到するほど人気があるといいます。前年にプログラムを受講した学生が、翌年スタッフとして下の学年を支える側に回ることで、様々なノウハウが受け継がれるだけでなく、より良い形へプログラムが洗練されていくことにつながっています。このような運営体制をどのように構築しているのか、というところもまた、今回の授業で学ぶべき観点といえそうです。

 

 

BLP事務局の主査でもある舘野先生は今回の授業の狙いについて、「今回のポスターセッション参観プログラムには、一度に多くの目的が入っています。当然ながら、学生たちにとってはここまでのチーム活動を発表する場であり、他の学生や社会人の方々からのフィードバックが得られる機会となります。大学、教員側にとっては、クライアント企業やLDC生、卒業生など、多くの方にBLPの活動を知っていただく貴重な機会となります。また、企業や学校でリーダーシップ教育を広げるために、リーダーシップ教育の事例を知っていただく、といった目的もあれば、本日のLDCのみなさんのように、授業の一環で実際にリーダーシップ教育プログラムをつくる側の方々にプログラムの設計や運営について学んでいただく、という目的もあります。本日はポスターセッション修了後のミーティングの方にも参加していただきますので、表側だけでなく、裏側で学生スタッフたちがどんな動きをしているかにも着目してください。参観後には参加者同士のコミュニケーションの機会もご用意していますので、このようなプログラムはどんな意味があるのか、企業にとってはどうなのか、学生にとってはどうなのか、といったことを議論していただければと思います」と話しました。

 

その後、経営学部客員准教授の宇田武文先生からBL2のプロジェクト概要、BLPの運営体制、ポスターセッション見学、フィードバックにおける注意点などの説明があり、いよいよポスターセッション見学です。ポスター発表は60班が3教室に分かれて行います。見学者はグループ毎に割り当てられた教室へと移動します。

 

14時、ポスター発表会場を訪れると、広い教室には既に大勢の学生たちが集まり、スケジュールの確認や発表、フィードバックの手順、注意事項など学生向けのガイダンスが行われていました。その場を取り仕切っているのは、お揃いの黒いTシャツを着たSAやCAなどの学生スタッフです。

 

14時10分、見学者も入場し、いよいよポスターセッションがスタート。会場内には、様々なポスターが貼られ、側には発表担当の学生が2-3名立っています。見学者は興味を惹かれたポスターの前に進み、5分ほどポスター発表を聞き、質問をしたり、フィードバックを返したりします。見学者は、教室を歩き回りながら、時間いっぱいこれを繰り返します。学生の方はチーム毎にポスター発表側とフィードバック側に分かれ、前半、後半で交代します。 

 

 

テーマが「20代社会人がはたらく上で感じている課題の解決」ということで、ポスターの内容は「新卒1,2年目の社員がどのようにして上司や先輩と人間関係を築くか」「3年目までの社員のスキルアップをどうサポートするか」「現場で必要とされる専門知識、専門用語を学べるような通信教育をつくる」など、はたらく若手にありそうな課題が集まっています。中には「睡眠不足の解消」「髪型や髪色などによる制限の解消」など、学生ならではの視点からの課題設定したものもありました。

 

5分間のポスター発表後は聞き手側から質問やフィードバックが返されます。「このテーマはとても共感できるので、もっと突き詰めてほしいです。ただ、サービスにつなげるのであれば、この課題が解決できたら企業にどんなメリットがあるのかを示す必要がありますね」「誰が何に対して困っているのか、もう少し、課題の解像度を高めたら、プランが具体的になってくると思いますよ」「睡眠時間が長く取れる方が仕事の効率が上がる、といったデータがあるとさらにいいですね」などなど。中には「ここで『課題』とされているものは、単なる『事象』であって、『課題』ではないですよ。もう一度、掘り下げてみた方がいいと思います」といった鋭い指摘も。

 

対面で行われたポスターセッションでしたが、オンラインで参加したLDC生も、事務局が用意したスマートフォンによるライブ中継でポスター発表を見学。質問やフィードバックも問題なくできていたようです。

 

 

あっという間に2時間が経ち、ポスターセッションは終了。教室移動、休憩後16時からは担当教員、SA、CAそしてクライアント担当者が集まっての授業後振り返りミーティングの見学です。振り返りミーティングでは、少人数でGOODポイント(良かった点)、MOTTOポイント(改善点)を出し合い、その後、全体共有を行います。

 

「GOODポイントとしては、多様な方々にフィードバックを得られる機会というのはやはり一気に視野も広がっていいなと感じました。また、学生同士互いにフィードバックする経験も、自身の課題を見直すうえで有意義なことと思えました。MOTTOポイントとしては、課題をもう少し広い視野を持って多面的に捉えたうえで、そこから絞り込んでいく方が課題を深堀ることができるのではないかと思います。また、運営面ではそれぞれの発表時間やフィードバック時間がバラバラであったために、待ち時間ができてしまうなど、時間的なロスがあったので、もう少し効率的にポスター発表を回れるような時間配分を考えられたらいいのでは、という話が出ました」など、ポスター発表に関するものから運営面に関わるものまで、様々な意見が出され、改善策についても活発に議論が交わされていました。

 

 

クライアント企業の担当者からは「短い期間によくこれだけ調べて、まとめ上げたなという気がします。また、我々が考えもしないような学生ならではの視点にはっとさせられるものがいくつかありました。また、やはりリアルなポスターセッションというのは、直接やりとりができ、いいものだなと感じました。今後が楽しみです」といった言葉がありました。

 

最後はLDC生が集まり、ポスターセッションの振り返りが行われました。舘野先生はリアルタイムセッションでの学びに期待することとして、「今回、LDC開講3年目にしてようやくBLPの見学をしていただくことができました。春学期のこのタイミングでみなさんが同じ光景を目にし、リーダーシップ教育のイメージを持っていただいたことは、その後の学びにも大きく影響するように思いますので、このような機会をつくることができて本当に良かったです。これまでの授業では、オンデマンド形式で6回に渡って理論を学んできましたが、やはり理論と実践の架け橋になるものが必要です。今日は、理論を実装するとどうなるのかを見ていただいただけでなく、言葉にならない現場の実践知や泥臭い現場の空気のようなものも感じていただけたのではないかと思います。今回は、みなさんにこのような場をつくる側の人になっていただくため、表も裏も見ていただきました。みなさんが今後、LDCでの学びを現場で実践していくために、レシピだけでは分からない部分を感じて学んでいただけたらと思っています」と話しました。

 

 

LDC生とBLPの接点は、今後どのような化学変化につながっていくのでしょうか。LDCの学びはまだまだ続きます。