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  • 2021.11.12
  • 授業
  • 大学院での学びをキャリアに活かす「キャリアとリーダーシップ論」

10月8日(金)18時半~、2年生、キャリアとリーダーシップ論の第3、4回授業がオンラインで行われました。キャリアとリーダーシップ論は、キャリアの理論やアプローチについての学習と自身の体験を語る活動を通して、大学院での学びと修了後のキャリアについて省察を深める授業です。LDC修了者として次のステップを見出すこと、今後の取り組みにおける課題や新たな可能性を見出すことを目的としています。担当教員は産業組織心理学がご専門の髙橋南海子先生です。
 

 
この日の授業テーマは、「実践を語る/プロセスを聞く」。少人数グループでそれぞれが長期に渡って行った実践、実務の過程を振り返って物語り、それをグループで聞き、対話しあう「ラウンドテーブル」の演習が行われました。自らの実践を、対話を通して振り返り、どのようなものだったのかと改めて意味づけしたり、より本質的な問題、課題への気づきを得たりして、次のステップを見出していくことがこのワークのねらいです。
 
 

 
 
授業の冒頭で進め方の確認が行われた後は、すぐにブレークアウトルームへ分かれ、3人1グループでのセッションが始まりました。1人につき1時間かけて、授業内に3セッション行います。語る内容は、LDC進学に関連の深い仕事の実践について、または、この1年半取り組んできたLDCでの実践について。受講生は予め振り返りたい実践について記述したシートを用意し、メンバーと共有しながら進めます。

 
まずは、語り手となった人が、自分の実践を振り返ってじっくりと語り、メンバーはそれをじっくりと“聴き”ます。その際、語り手は、単に経緯を説明するのではなく、その時、何を思い、どう感じたのか、どう考えているのか、など感情や自身の考察も交えて“物語り”ます。

 
このワークでは「物語る」こと以上に「聴く」ことが重視されます。聞き手はあまり質問をはさまず、うなずいたり、あいづちを打ったりしながら、好奇心を持って聞きます。「自分がどう聞いているのか、共感したのか、驚いたのか、何か言いたくなったのか、自分の経験を思い出したのか、と自分に意識を傾けながら最後までじっくりと“聴く”のがポイント」とのこと。

 
早速、それぞれのグループで、それぞれの実践の“物語り”が始まりました。

 
「希望していた部署に配属されたのに、ものすごく優秀な上司や先輩がいて、自分はまだまだだ。もっと力をつけたい、武器になるような専門性を身につけたい、と感じてLDCへの応募を決めたんです」

 
「成果が出せず、悩んでいる時期に、上司から『お前の強みは他人のことを気にせず、信じた道を突き進むところだ』と言われ、吹っ切れたんですよ」

 
「人事部から不本意な部署に異動となって、私はやっぱり、人や組織に関わる仕事がしたいんだ、と思っちゃったんですよね…」

 
「毎日淡々と仕事をしては帰る先輩の姿を見て、『このままだと俺もあの先輩みたいになっちゃう』って、すごく危機感があって。人や組織についてしっかり学んで、自分で道をつくっていかなくては、と思ったんです」

 
自分はどんな人生の選択をしてきたのか、じっくりとキャリアヒストリーを語る人、自分の強みに気づくきっかけとなったLDCでのエピソードを語る人、「人や組織について大学院で学びたい」と感じるきっかけとなった仕事について語る人。ゆっくりと言葉を選んで語る人もいれば、時折、笑いを取りながらテンポよく話す人も。個性豊かな語り口で、それぞれの忘れられないシーンが再現されます。入学から1年半、苦楽を共にしてきた同級生だからこそ、安心して生き生きと語ることができているようです。聴き手も、これまで1年半、共に学んできた仲間の意外な一面を知り、興味深げに聴いています。遮られることなく、聴いてもらえている安心感があるからか、語り手となった人は誰もが夢中で自分の経験を語っていました。

 
20分~25分ほどかけて“物語り”が終わった後は、5分~10分程度、語り手は画面オフ、ミュートにし、聴き手同士で感想を述べあい、気になったことを話し合います。そして、「〇〇さんは、あまり気が向かないような仕事でも、成果を意識して、一所懸命仕事に取り組む人だよね。仕事のモチベーションがどんなところにあるか聞きたいね」「○〇さんは、いつも他人との比較で、自分に足りないところを見つけて、それを補おうとしてキャリアを選択してきているよね。どうして他人が気になるのか聞いてみよう」など、質問したいことを協議します。この間、語り手は聴き手の話を聞くことができるので、自分の話が「どう聴かれたのか」を知ることができるのが面白いところです。

 
その後は再度、語り手の画面をオンにして、聴き手からの質問を交えて話し合います。聴き手が気になったことを質問し、掘り下げていくうち、それぞれの語り手の価値観や考え方の癖、願望や劣等感なども見えてきます。途中からはLDCの学びを今後のキャリアをどう生かしていけばいいか、プライベートとの両立をどうすればいいのかなど、お悩み相談会になっているグループも。最後は感想をシェアしてラウンドテーブルは終了です。

 
金曜日の夜に1時間のラウンドテーブルを連続で3セッションを行うのは、かなりハードなはずですが、「自分の話だけを聞いてもらえるのはとても嬉しいこと。安心して気持ち良く話せた」「聴き手の人たちから指摘され、自分の思い込み、固定観念に気づいた」「語ってみて、自分自身を客観的に見ることができたし、成長実感をもてた」など、受講生たちの表情はスッキリ晴れ晴れとしていて、充実した時間であったことがうかがえます。

 
授業後、髙橋先生は、「この授業は、みなさん自身が当事者となってキャリアを考える授業です。キャリアの理論は、経験や事実を解釈、整理する手がかりとして活用するという位置づけで、大学院生活を含む、ご自分の実践やキャリアの振り返り(棚卸し)をしながら、対話を通して気づいていただくことを重視しています。受講生は2年目ということもあり、お互いニックネームで呼び合うなど関係性ができているためか、今日のセッションも温かくていい雰囲気で進められました。少し意外だったのは、みなさん、人の話を聞く機会は多いようなのですが、自分のことを語る経験があまりないとおっしゃっていたことです。また、問題解決志向が強いためか、すぐに解決しようとしがちなところがあります。この授業で、すぐに結論に走ろうとせず、曖昧さに耐え、感情や価値観にフォーカスしながら、混沌としたところを丁寧に探求し、洞察を深めていく対話的な聴き方を学んでいただけたらと思います」と話しました。

 
実は、髙橋先生も、社会人大学院で学んだ一人。自らの実践を対話を通して省察し実践知を得る、今回のラウンドテーブルのような省察的実践の取り組みには、大学院生時代に出会ったといいます。「実際に自分がやってみて、すごく良かったのです。次のステップに行く前に、いったいこの大学院生活はなんだったのか、自分は何を学び、以前の自分とどう違うのかを整理し、理解することができました。みなさんはLDCでたくさんのことを経験し、学ばれたことと思いますので、自分が何を学んだのか、振り返って整理し、意味づける時間を持っていただきたいです。この授業を通して、大学院で学ぶということが、自分の人生にどんな意味があったのか、さらには、学んだことがどう社会に還元できるか、そのために何ができるかを考えていただけたらと思います。今日は探索の第一歩です」

 
次回以降も、キャリアの理論についての講義と共に、様々な形でキャリアの振り返り、大学院での学びの振り返りを行い、最終回では大学院終了後にどんなアクションを取るのか一人ひとりがプレゼンテーションを行います。LDCでの学びをその後のキャリアにどう生かしていくのか。探索の旅はまだ始まったばかりです。