選択科目のオンライン夏期集中講義「ケースで学ぶリーダーシップ」が8月6日~9日の4日間連続で行われました。初日は約3時間半、2日目から4日目までは、昼食をはさんで5時間以上という濃密な4日間です。
担当は「ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法」(ダイヤモンド社)「残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方」 (光文社新書)などの著作もあるZホールディングス執行役員 本間浩輔先生です。
本間先生は、初日の授業の冒頭でクルト・レヴィンの「良い理論ほど実践的なものはない」という言葉を取り上げ、「リーダーシップを学ぶのなら自らがリーダーシップの実践者であるべき」と語ります。受講生自身が使えるリーダーシップを学び、実践につなげることを目的としているところもこの集中講義の特徴。7名のヤフーをはじめとするZホールディングス各社の人事スタッフの方々がTA(ティーチングアシスタント)として入り、グループでの討議の質を高めると共に、受講者たちのリーダーシップ開発をサポートします。
この授業は「ケースで学ぶ」というタイトルがついているように、実際に起きた事例を教材とし、討議していくことで答えを導き出すケースメソッドを取り入れた講義です。ケースメソッドでは、文章化されたケース教材をつかって討議していくのが一般的ですが、この授業では、文章のケースだけでなく、受講生にとって身近なドキュメンタリーや映画などもケーススタディの素材として扱います。
今回、2日目、3日目の授業で取り上げられたケースは、2011年の福島第一原子力発電所の事故を描いた映画「Fukushima50」。2日目の午後はこの映画「Fukushima50」を題材に、登場人物たちのリーダーシップについてグループ討議が行われました。「予測のつかない事故が次々と起こり、対処に追われる10年前の福島第一原子力発電所での状況が、出口が見えない新型コロナのパンデミックの猛威に翻弄されている今の状況と重なる」といった意見が多数上がりました。
3日目の授業は、事故をよく知る方を特別ゲストとして迎え、質疑応答を通じて組織や人、企業経営など様々な観点からこのケースについての理解を深めていきました。危機のリーダーシップと平時のリーダーシップの違い、現場の人たちがいざという時に使命感を持って責務を果たすことができたのはなぜなのか、有事のリーダーシップを平時からどのように備えておくべきかなど、映画に映し出されていた部分からは想像しにくい背景や視点からの話を聞き、受講生たちからは「お話を伺う前と後では映画の印象が全く変わった」「一つ一つの事象を解像度高く見なくてはいけない、と感じた」といった声が上がりました。
この映画をテーマとした理由について、本間先生は、「どのようなケースを学生に提示するのかは、講師の腕の見せどころだと考えています。受講生たちに興味を持って取り組んでもらえるようなケースを探していたところ、ゲストの方の了承も得られ、この映画に決めました。ケーススタディというのは、ケースを通して学んだことを、現実に目の前で起きているケース、事象に対して使えるようにならなければ意味がありません。震災から10年という節目の年ということもありますが、今起きているCOVID-19によるパンデミックという危機に対してどのようにリーダーシップを発揮していくのかを、ケースと重ね合わせて考えてほしいと考えました」と話します。
グループ討議の際は各グループに1名のTAが進行をサポート。TAの方々が加わることで、いつもは受講生しかいないブレイクアウトルームでの議論もこれまでとは異なる緊張感が生まれていたようです。ヤフーでHRBP(事業部人事)として人事業務全般に携わる宮田香さんは、TAを務めた感想を次のように述べました。「やはり自ら学びに来ているためか、みなさんとても熱心で真面目な方々ばかりで、活発に議論なさっている様子が印象的でした。受講生たちが学んだことを実践に移していかれるよう支援することがTAの役割ですので、『あなただったらどうしますか』など、リアリティを持ってもらえるような働きかけを意識しました。議論が深まるよう、異なる視点からの問いかけをしたり、少し揺さぶりをかけるような質問を投げかけたりというところも心がけました」
3日目の授業後は、TAも交えたオンライン懇親会が開催されました。本間先生は「この機会にぜひTAの人たちとも交流を深め、ネットワークづくりにつなげてほしい」と話します。
懇親会は、受講生4~5名につきTAが加わる形ブレイクアウトルームでスタート。話すテーマはルームによって様々。一人ひとり、じっくりと自己紹介をしているルームもあれば、ヤフーでの1on1がどのように行われているかを熱心にTAに質問しているルームも。午後の授業で扱ったケースについて「人材育成、リーダーシップ開発には『修羅場経験』が必要というのは分かるが、その場合は『この人事異動は修羅場経験を積むことが目的だ』と本人に伝えるべきではないか。いや、そもそも修羅場経験はデザインできるものなのか?」などと、真剣な議論が交わされているルームもありました。
別のルームでは、本間先生への質問コーナーが開かれ、「ケースメソッドで学んでいくうえでおすすめのやり方は?」という問いに、本間先生は「ただケーススタディをするだけでなく、自社の事例で自分なりのケースをつくってみると勉強になる。ケーススタディは正解の無い問題が起きたときに、どう決断するのか、そのプロセスを疑似体験することができる。日本人は答えをきちんと出そうとしがちだが、むしろ正解の無い問題、矛盾に満ちたケースをやっていくことを勧めたい」と答えていました。
在学生や教員とのつながりだけでなく、人材開発・組織開発に関わる実務家と交流する機会が得られるのも、実務家教員が多くいるリーダーシップ開発コースならでは。知的刺激に満ちた夏期集中講義を経て、LDCの学びは秋学期へと続きます。
※リーダーシップ開発コースについて理解を深めていただくための説明会を開催予定です。ご興味のある方はお早めにお申し込みください。
開催日時:2021年9月18日(土曜)10:30~12:15
詳細 :2021年9月 リーダーシップ開発コース説明会開催・申込み方法について
※定員に達し次第、申込は締め切ります。