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  • 2021.08.04
  • 授業
  • リーダーシップ開発とリーダー発達はどう違う? 「リーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト」最終授業

7月17日(土)1年次「リーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト(LWP)」の最終授業がオンラインで行われました。最終授業のテーマは「リーダーシップ開発」です。


入学から3か月間に渡り、1年次22名の受講生たちはチーム毎にオンライン・ミニワークショップを開発するグループ課題に取り組んできました。前回行われた最終報告会では、外部から参加者を招いた形で各チームとも工夫を凝らしたレベルの高いオンライン・ワークショップを披露しましたが、そこで終わりではありません。「リーダーシップ・ウェルカム・プロジェクト」はチーム活動を通して自身のリーダーシップを磨くと同時に、「リーダーシップ開発を学ぶ」ことも目的の一つです。最終授業では、各々のチーム活動を振り返りつつ、リーダーシップ開発について講義が行われました。


まずは、これまでのチーム活動について振り返ります。藤澤先生が、受講生たちが提出したチーム活動の振り返りに関するレポートをテキストマイニングや共起キーワードなど様々な手法で分析した結果を提示。藤澤先生によると、全チームで「葛藤や矛盾」が起きていたとのことで、どのような「葛藤や矛盾」があったのかを解説しました。「葛藤や矛盾」と聞くと、避けるべきことのように思われますが、中原先生は、人材開発・組織開発において「葛藤や矛盾はごちそう」だと話し、葛藤や矛盾を乗り越えようと組織を作り変えるときに「学習」が起きる、とするエンゲストロームの活動理論を紹介。それぞれのチームで「葛藤や矛盾」を乗り越えるために何が起こり、どのような変化があったのかをブレイクアウトルームで話し合いました。


受講生たちからは、「最初、自分が引っ張っていかなければ、とチームを仕切ってしまったが、他メンバーの参画意識に影響していることに気づき、中間フィードバック以降はチーム全員でやっていこう、と意識するようになった」「中間フィードバックで先生方から厳しい指摘を受け、途中から『先生向けワークショップ』になってきてしまった。最終報告会前に『対象者は誰なのか』を話し合って再度確認し、修正することができた」「話し合いが深夜までになると、議論が空回りしてきて、雰囲気がまずくなってしまうことがあった。最終報告会の1週間前にメンバーの一人が『今、思っていることを長めに話そう』と提案してくれたことで、それぞれが本音で話すことができ、いい形で最後の1週間を過ごすことができた」など、様々な葛藤を乗り越えた経験が語られました。


続いて、リーダーシップ開発についての講義です。リーダーシップ育成は近年、リーダー発達(Leader development)とリーダーシップ開発(Leadership development)の2つに分けて考えられています。「リーダー発達」はリーダー個人に働きかけ、内部要因(スキル、能力)を伸ばすことをめざすものであり、「リーダーシップ開発」はリーダーがフォロワーやリーダー以外の他者と取り結ぶ対人関係、組織要因などを探究したり、変容させたりする「関係の開発」といわれます。リーダー個人が持つべきスキルを開発したり、リーダー自身のパーソナリティ把握や、アイデンティティ形成、タフな業務経験の蓄積などをどうやって後押しするのかを研究するのが「リーダー発達研究」で、チーム内で、どうすればリーダーとフォロワーの関係性を良好に保ったり、リーダーとフォロワーが自己理解を進めながらお互いの関係を発展させていかれるかを研究するのが「リーダーシップ開発研究」と呼ばれています。


しかし、現場での実践では、これら2つは明確に分けられておらず、混然一体となった形で「リーダーシップ研修」が行われていることがほとんどだといいます。ちなみに、日本企業のリーダーシップ開発で最も多く行われていることの一つは「360度フィードバック」であり、これに「アクションラーニング型のリーダーシップ開発」を組み合わせているケースが多いとのこと。「とはいえ、実務が主体なので理論で分けることにさして意味はありません。実務のニーズに基づきながら今、まさに発展している領域です。一番いい組み合わせで自社にあったものをやっていくことが重要です」(中原先生)。講義の中では、特に近年多く行われるようになっている「アクションラーニング型のリーダーシップ開発」の研修について、具体的な事例を取り上げながら、その要諦を詳しく解説していきました。


中原先生は「日本ではまだまだリーダーシップ開発が行われていません。特に学校ではほとんど行われていない印象です。リーダーシップ発達は一生のものなので、何歳からでも意味はありますが、やはり40歳で初めてリーダーシップ研修をやってリーダーシップを高めるのではちょっと遅い。やはり若いときからやったほうが効果が高いのは確かですので、もっともっと裾野を広げたいという思いがあります。たとえば、小・中・高校などでは、文化祭や運動会、部活、生徒会など様々なチーム活動がありますが、そこにフィードバックと振り返りを組み込むだけでリーダーシップ開発になります。日本社会全体にリーダーシップ開発を浸透させていくためにも、LDCで学んだみなさんには、ぜひ現場でリーダーシップ開発の実践をしていっていただけることを願います」と話します。


秋学期からはいよいよ、クライアント企業に対してチームで課題解決を行う「人材開発・組織開発論」が始まります。午後18時からは一足早く、「人材開発・組織開発論1・2」「データアナリティクス演習1・2」の合同キックオフも開催されます。中原先生は「春学期のウェルカム・プロジェクトは高尾山へのハイキングみたいなものです。秋学期は雪山登山!?となりますので、夏休みには関連する本をたくさん読んで基礎体力をつけ、装備をしっかり準備して臨んでください」と受講生たちを激励し、授業を終えました。