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  • 2021.03.26
  • 授業
  • グループ・プロセス・コンサルテーションを学ぶ特別講義

2021年3月13日(土)13:30より、「グループ・プロセスへの働きかけ(介入)入門編―ユースオブセルフを高める」の特別講義が行われました。受講生たちは、3日間に渡ってクライアントを支援するためのミクロな働きかけ方、組織開発の実践者としてのあり方を学んでいきます。講師は組織開発実践者である組織クオリティ・デザイン・ラボの松本加奈子さん。中原淳先生も参加されています。


特別講義の参加者は14名。秋学期終了後、1か月近く間があき、一期生が久しぶりに顔を合わせる機会だったこともあり、受講生たちのテンションは高めです。


講義は松本さんの自己紹介からスタート。建設会社の受付からホテルへ転職、その後、外資系航空会社のCAを経て、ザ・リッツ・カールトン大阪、大阪ガス行動観察研究所、オージス総研で人・組織支援の内部実践者、外部実践者を経験し、独立されたという松本さんの魅力的なキャリアストーリーに受講生たちも興味津々です。


「チェックイン」タイムでは、一人ひとり「呼ばれたい名前と自己紹介、今ここの気持ち」を述べていきます。「次年度、自分に組織開発ができるのか、不安もあるので、今日から3回の講座で実践につなげたいです」「特別講義なので成績関係ないし(笑)、ゆったりと受けようと思ってます。すごく楽しみです」「春休み気分で少しぼんやりしていたのですが、春からの授業への焦りも出てきています。リハビリを兼ねてしっかり学びたいです」といった声がありました。


講義は「まつもとかなこのしくじり先生」から始まりました。松本さんは以前、ご自身が組織開発の外部支援者として関わることになった際、自らの思い込みによって配慮に欠けた行動を取ってしまい、クライアントを激怒させてしまったことがあったそうです。その時の失敗談を紹介し、「このストーリーからクライアントシステムの方々を支援する機会をなぜつくれなかったのか?どうすればよかったのか?をグループで討議して考えてほしい」と投げかけます。受講生たちはグループで話し合い、様々な意見が挙がりました。


松本さんは「自分でも違和感に気づいていながら、行動を変えられなかった」このときの経験を振り返り、「プロセス・コンサルテーションにおいて自分のプロセスを活用すること=ユースオブセルフ(Use of Self)の重要性に改めて気づいた」と話します。


「プロセス・コンサルテーション」とは、「クライアントの世界で起こる様々な出来事をクライアントが認知し、理解し、それに対処するように援助する、コンサルタントの一連の活動」です。あるグループを対象にプロセス・コンサルテーションを行う「グループ・プロセス・コンサルテーション」においては、グループの「今ここ」で起きている見えにくい事象に働きかけをしていく必要があり、そこでは、自らの観察、価値観、感情などに基づいて動くことで自己を活用すること=ユースオブセルフが不可欠といいます。


松本さんは「これからみなさんには、グループ・プロセス・コンサルテーションのためにユースオブセルフを高めていく練習としてワークに取り組んでいただきます」と、演習の目的を説明しました。


演習の内容は、あるテーマについて「14人全員で45分間対話する」というもの。「はい、始めてください」と、スタートしたものの、テーマが抽象的であるうえ、どんなアウトプットが求められているのかも定まっていないため受講生たちは戸惑いの表情を浮かべています。話をリードしようとする人もいれば、ほとんど話さない人もいます。不思議な緊張感が続く中、話は全く関係ない方向に進んでいきました…。


微妙な空気のまま45分間が経った後は、グループ・プロセスの観察ポイント、個人プロセスの観察ポイントを軸に、振り返りを行っていきます。「比較的協力的だったが、顔色見ながらの話し合いだった」「テーマが抽象的なためか、話題がフワフワしていた」「Aさんが困っていたときに助け船してくれた」「自分が何をするべきかわからず、不安だった」「沈黙が耐えられないタイプなので、つい話してしまった」など、それぞれに葛藤もあったようです。


松本さんは「今日の演習はあえて『今ここ』に起きていることに集中し、プロセスが浮き出るようにしました。今の45分間はみなさんのベースラインになると思います」と話し、次回までの個人ワークの課題を発表。その課題とは…「45分間の対話の様子を録画した映像を見直し、細かくグループや自分に何が起きていたかを振り返っていく」というもの。グループ全体だけでなく、自分自身の内面も観察することが求められる個人ワークです。


授業後は「これから映像を見て分析するのはめちゃ怖い。自分の嫌なところもしっかりと見ていかなくてはならない、と感じた」「あまり話せなかった。話さなきゃ、とモヤモヤした葛藤があった」といった感想が聞かれました。


「みなさんが、できる限り自分と向き合おうとしているのが伝わってきました。モヤモヤするかとは思いますが、それがいけないというわけでもなく、すぐに解消する必要はありません。むしろモヤモヤと仲良くやっていければいいのかと思います」と話す松本さん。受講生たちは自分なりの「ユースオブセルフ」を体験から感じ取ることができるでしょうか。授業は第2回3月20日(土)、第3回3月27日(土) へと続きます。