必修科目の一つである「経営戦略論」のオンライン講義が9月25日(金)から毎週金曜18時30分から21時55分まで、全7週14回開催されました。担当は経営戦略論、組織論がご専門の鈴木秀一先生と株式会社ニコン在職中に立教大学で経営管理学博士を取られたイノベーション論がご専門の林征治先生 です。
「経営戦略論」で目指したいことについて、鈴木先生は「受講生の方々には経営者の視点に立ってもらいたい、経営戦略について学ぶことで、会社全体を俯瞰して眺める大きな視点を養っていただきたい、と考えています。また、組織を動かすうえでは、計算と理念の両方が大切です。正確な分析に基づいた計算も重要ですが、もう1つ、人を惹きつけ、人を動かす理念、ヴィジョンもまた重要です。相反するようでいて、どちらも重要なことがある。そうしたことを、ディベートを通して学んでいただけたらと思っています」と話します。
林先生は「戦略にはサイエンスの部分とアートの部分があると考えます。リスクに対応するのはサイエンスの部分であり、不確実性に対応するのはやはりアートの部分です。受講生のみなさんには、戦略にこうした二面性があることを理解していただきたいと思います。また、戦略論には様々なフレームワークがあります。それらを知っていただくと同時に、限界があることも知っていただきたいと考えています」と話します。
授業では、経営戦略論の講義と共に、様々なケーススタディを行います。といっても、単にケースを読み、グループで検討、議論する…といったものではありません。鈴木先生がホストを務められる回では、ケースを読んだうえで、提示された議題について肯定派、否定派に分かれてグループ対抗でディベートを行い、林先生がホストの回はケースについて各グループが自由に発表を行い、発表チーム以外の人たちが評価して採点し、点数を競うというスタイルで進められます。評価は毎回点数化され、勝敗がつけられるので、受講生にとっては緊張感のある授業となっています。
どのような授業が行われているのでしょうか。10月30日(金)第6週目のオンライン授業にお邪魔しました。授業の冒頭30分は鈴木先生による講義です。講義内容はミンツバーグによる創発的戦略論に関するもの。1960年代にホンダが小型バイクを米国で売り出し、市場を席捲したケース「ホンダ・エフェクト」を取り上げ、ポジショニング戦略によって緻密に計画された戦略のように見えるこのケースが、実際は現場からの創発的な働きにより成功したものであったという話から、計画的戦略論とは異なる創発的戦略論の考え方について解説。本社での戦略プランニングには限界があり、ミンツバーグが「計画的に創発的であれ」というように現場での創発を生かすためには、組織の力、組織の学習能力が問われるというところを強くお話されていました。
その後は、グループに分かれてディベートの準備に入ります。ディベートの議題はトヨタ自動車を例に「コロナ禍の日本でも創発戦略は有効か」というもの。難題ですが、トヨタ自動車の経営幹部にプレゼンを行うつもりで、4チームの代表者が1人ずつ肯定派、否定派に分かれてディベートを行います。ディベートのルールは肯定チームが肯定する理由を2つ挙げて4分で主張し、否定チームが同じく理由を2つ挙げて4分で主張。その後5分間、チーム別にブレイクアウトルームで相談し合い、今度はそれぞれ4分ずつ、相手チームへの反駁を行い、最後は7分で教員ジャッジから質問とコメントをもらい、その他のチームが肯定、否定どちらの意見により納得したかをジャッジする、という形で行われます。
授業にディベート形式を採用している理由について鈴木先生は「実は学部で十数年ディベート形式をやっていまして、組織や戦略の問題を考えるうえでとても効果的だと感じているからです。ディベートするためには、ケースの論点がどこにあるのかを見極め、それに対して肯定か否定かを決めなくてはならないので、論点の整理と自分のロジックづくり、そのためのエビデンス探しがしっかりできるようになります。しかも、論点を絞って4分で話さなければならない、となると頭の使い方が自然と戦略的になっていきます。ディベートは今回で3回目ですが、みなさんどんどん上達してきてディベートの質が上がっています」実際、どのチームのスピーチ(プレゼン)も短い中でトヨタの事業戦略や組織力についての考察、市場の動向、様々な論文からの引用なども用いて「なるほど」と思わせるものになっており、そこに先生方のフィードバックが入ることで、より深い議論が導かれていく授業となっていました。
最後は次回講義で取り上げる「ダイソン」の事例について林先生からの講義、解説が行われました。最終回は「逆風野郎 ダイソン成功物語」を読み、「日本の組織にとって本自伝の教訓は何か?」を各チーム代表者がプレゼンしあい、ピアレビューするというもの。受講生たちの学びはまだまだ続きます。