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  • 2021.06.04
  • 授業
  • 研究手段としての質的研究を学ぶ 「質的研究法」

2年次の選択科目、「質的研究法」の授業が4月23日(金)から始まりました。担当は東京大学教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門特任助教の伊勢坊綾先生。人的資源管理、組織行動論がご専門です。授業進行のサポート役は藤澤広美先生。お二人による授業は金曜日18時30分~21時55分まで、全隔週で14回7日間で行われます。

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この授業では、参与観察やインタビューなどを通してデータを収集し、現象を分析・解釈していく研究のアプローチとして知られる「質的研究法」について学びます。2年次のリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトでは、それぞれがクライアント組織を対象に組織課題を解決するために人材開発、組織開発の取り組みを実施し、その成果をまとめた報告書を提出します。これらの取り組みの成果を明らかにする方法の一つとして、「質的研究法」のアプローチを学び、リーダーシップ・ファイナル・プロジェクトに活かしてほしい、というのがこの授業の狙いです。


どのような授業が行われているのでしょうか?5月21日(金)のオンライン授業の様子をお伝えします。
1、2回目の授業では質的研究の方法論について、3、4回目授業ではデータの収集法について学び、5、6回目のこの日は、面接法における「インタビュー調査」について学びます。最初に前回までの授業の振り返りを行った後、まずはブレイクアウトルームでディスカッション。受講生は、これまでのインタビュー経験について、成功したポイント、失敗したポイント、今後のインタビューで心配なポイントについて話し合います。


受講生からは「聞きたいこと、聞く順番を事前に準備できていなかった」「誘導質問してしまった」「自分でも何を聞きたいのかわからなくなってしまった」「事前の下調べが十分でなかった」「こちらが話過ぎてしまった」「研究ならではの注意点が分からない」など、様々な「インタビューあるある」が挙げられました。実際にインタビューを行ってみたところ、「このやり方でよかったのかと、不安になってしまった」という受講生もいました。


続いて「インタビュー調査」について伊勢坊先生からのレクチャーです。インタビュー調査において、どのような問いを立て、どのような技法を選ぶのか、といったところから、インタビューガイドの作成方法、インタビューでの注意点、そして得られたデータの分析方法まで。ポイントを押さえつつ、駆け足で解説していきます。


研究は、解決すべき課題は何か、「問い」を立て、研究目的に合った調査対象、調査技法、分析方法を検討するところからが出発点。インタビューが目的になっては本末転倒です。研究目的に合った「インタビュー調査」ができるよう、インタビューガイド(質問文の例)づくりを含め、調査の設計段階が重要とのこと。


インタビュイーとの間にラポール(信頼関係)を築き、調査目的に合った“いいインタビュー”を行うのも難しいことですが、それと同様に難しいのが、集めたテクストをどう分析し、どう研究するのか、というところです。後半は、質的データの分析方法の一つであるTEM、SCAT、 M-GTA、そして、質的な情報をデータベースとして効率的に運用していくことを可能にする機能が装備されているQDAソフトについて、受講生4人がそれらについての論文をレビューし発表。どのような研究で用いられるのか、どのような分析手続きが必要か、分析時のソフト利用における課題などを学びました。


最後は「それぞれの分析手法の違い」「リーダーシップ・ファイナル・プロジェクトで使うならどれか」をテーマにブレイクアウトルームでディスカッション。ファイナル・プロジェクトに向けてどのような研究を行っていくか、少しずつイメージがクリアになってきたのではないでしょうか。


伊勢坊先生は、この授業について、「受講生の皆さんは、昨年度、量的研究を学ばれていたこともあり、量的研究で明らかにできる事はよくご存じでしたが、『問い』に対して適切なデータを収集、分析してもらうことが大切ですので、その選択肢の一つとして質的データの収集、分析というやり方もあるということを理解していただければと考えました。また、質的研究で具体的にどのようなことが明らかにできるかを知ってもらえればと思い、前回の授業で、エスノグラフィーなどいくつかの質的研究による論文を扱いました。すると『質的なアウトプットも面白い』と興味を持たれた方も多く、『自分のリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトでも質的研究法を使いたい』という方も出てきました。質的研究は、因果で説明できないもの、主観的なもの等、複雑な人間の心や機能へのアプローチが可能で、相互作用的なものを明らかにすることができる研究法です。きちんと研究手段として使っていく方法をお伝えし、ご自身のリーダーシップ・ファイナル・プロジェクトに役立てていただきたいと思っています」と話します。


受講生には「与えられたテーマについて、各自、3人に10分間インタビューを行い、文字起こしした逐語録を持ってくる」という課題が出されました。次回は、インタビューデータの逐語録を使って、質的データ分析の実践を行う予定です。